阪神、藤原1位指名なら金本監督に新外国人投手2人獲得を提示…球団内外からは2つの懸念

「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記
大阪桐蔭の藤原。豪快なフルスイングが魅力だ

 鉄人には藤原1位指名なら先発型の新外国人投手2人獲得をセットで提示ー。阪神は10月25日のドラフト会議で大阪桐蔭の藤原恭大外野手(18)を1位指名する方向で調整中です。電鉄本社からの強い意向で高山、大山に続く若手野手補強路線の継続ですね。しかし、来季が勝負の年となる金本知憲監督(50)の希望は即戦力投手。藤原1位なら来季1軍戦力とはいえず、現場のニーズに応じるためには先発型の新外国人投手2人の獲得が最低限の“交換条件”です。そして藤原1位には球団内外から2つの懸念が噴出しています。

 時が過ぎるのは早いものですね。第100回目を迎えた夏の全国高校野球選手権は大阪桐蔭が決勝で秋田の金足農を破り、史上初の2度目の春夏連覇を達成。そして、プロ野球のドラフト会議(10月25日)の話題があちこちで交わされるようになりました。

 ついこの前、阪神は夏の長期ロードに旅立って…なんて書いていたのに、もう夏を通り過ぎて秋の話題ですよ。コチラが年をとったせいなのか、時間が過ぎるのが早すぎます。

 さて、注目すべき阪神のドラフト1位は誰なのか? 結論から先に書くと「現時点では藤原恭大外野手が濃厚」となっていますね。藤原は大阪桐蔭では1年夏からベンチ入り。甲子園は2年春から今夏まで4季連続出場しました。

 今大会では4番・中堅としてチームの中軸を担い、強打、強肩、俊足を発揮しました。左投げ左打ちで高校通算本塁打32本、50メートル5秒7。高校生No.1の野手をドラフト1位指名する方向で阪神球団は内部調整しているようですね。

 当然ながら現場スカウト陣の評価も抜群だからこそ1位最有力なのですが、舞台裏では「電鉄本社筋の強い意向も働いている」と阪神OBのひとりは語りました。

 「坂井オーナーの意向が藤原1位なんだ。球団の長期ビジョンに立って1位指名を考えると、将来性豊かな藤原だろう…と。具体的な名前までは言わないようだが、話を総合すると『藤原1位指名』が球団幹部のヒアリングの結果だね。だから球団内部も藤原1位で進める態勢になっている」

 阪神はここ3年、ドラフト会議のイの一番で野手を指名してきました。3年前の高山(明大)、2年前の大山(白鴎大)、そして、昨年もクジは外したものの清宮(早実)→馬場(仙台大)を指名したのです。

 ドラフト戦略の底辺に流れるのは野手の戦力層の質量の向上です。金本監督の生え抜きの若手育成路線の色彩を濃くする狙いもあって、阪神電鉄本社ー球団は野手1位にこだわってきました。その流れを今年も継続する考えが読み取れます。

 ただ、今年のドラフト戦術も路線継続で…という単純な図式で済むかどうかは微妙な部分もあります。実際、藤原1位の動向には現場の長、金本監督の意向が入っていない…といいます。そして、関係者はこう話しているのです。

 「現場の希望は即戦力投手だよ。藤原を獲得しても高校生の外野手だからね。来季の戦力としては考えづらい。本社筋が言う通り、長期ビジョンに立った指名となる。しかし、金本監督は新たな3年契約の来季が2年目となり、監督就任4年目でもある。事実上の勝負の年。どうしても欲しいのはすぐに使える投手だろう。現場のニーズを満たしてやらないと、藤原1位をウンと言いにくいだろう」

 夏のロードの後半戦、連戦に突入する前、金本監督は「投手がいない。春季キャンプの時は一杯いると思ったのに…」と珍しく愚痴を漏らしました。頼れる先発投手はメッセンジャーひとり。秋山に昨季のようなキレはなく、岩貞も不安定。能見はリリーフに配置転換され、藤浪は復活の兆しも見られず2軍調整中です。先発陣は小野、才木らで必死でやり繰りしている状況ですね。

 来季に目を向けても楽観的な材料は見当たりません。高校生の外野手1位をスンナリと受け容れるにはそれなりの“交換条件”が必要でしょう。

 そこで球団内部で話し合われているのは先発型の新外国人投手2人の獲得です。来季はメッセンジャーがFAによる残留により日本人扱いになります。

 投手陣の外国人枠が1人空くことになり、同時に「リリーフ陣にマテオ、ドリス、モレノら3人も外国人投手がいるのか?」という声が今後の人事に反映されるでしょう。強力な先発タイプの新外国人投手2枚の獲得を約束することで、金本監督に「藤原1位」を承諾させよう…という狙いが見えてきます。つまり「藤原1位と先発型新外国人2人」はセットで現場に提示されるでしょうね。

 しかし、たとえ金本監督に新外国人投手2枚+藤原ドラフト1位+FA補強で浅村(西武)か丸(広島)=来季V布陣? を示し、了承を得たとしても懸念は消えませんね。それも2つー。

 まず1つはたとえ藤原の指名権獲得に成功したとしても現体制はちゃんと育成できるのでしょうか。確かに藤原は逸材です。しかし、高校3年間は金属バットです。

 昨季のドラフトの目玉だった清宮(日本ハム)でさえ、プロ入り以降、金属バットの“弊害”から木製バットになじめず、2軍生活が続きました。阪神に比べ、マスコミ環境が静かな日本ハムだからこそ、清宮は地道に努力して後半戦から1軍に合流できました。藤原には日本一うるさいファンとマスコミが周囲を取り巻き、そのプレッシャーに打ち克つのも大変です。

 加えて、現体制下での若手育成路線の成果を見てください。3年前の高山は今や2軍暮らし。2年前の大山は開幕構想では三塁定着のはずがベンチの控え要員です。伸び悩んでいるのは本人に大きな責任があるのですが、導く指導者の責任も極めて大きいでしょう。高校生の外野手、藤原を阪神が上手く育てられますか? 阪神ファンでさえ、この問いには声を詰まらせるはずです。

 そしてもうひとつ。藤原は大阪桐蔭の主砲ですね。OBは藤浪晋太郎投手です。最初の春夏連覇を達成した大エースですね。4球団の1位競合の末に当時の和田豊監督が左手で交渉権を引き当てました。そして、プロ入り3年目までは連続2ケタ勝利。それが、金本監督就任後は大不振で、今も2軍暮らし。大阪桐蔭の全ての関係者は金本監督をどう見てますか? 指名権を獲得して学校の門をくぐり、交渉権確定のクジを持っていくのは金本監督ですね。どんな思いで大阪桐蔭に向かうのでしょうか…。

 藤浪は藤浪、藤原は藤原…。そう割り切って入団交渉を進めていけるのでしょうか。当然ながら学校関係者も藤原の家族も「金本阪神の育成法、起用法」を問いただすでしょう。

 ある意味、異様な空気になるかもしれません。藤浪晋太郎をエースとして育て切れない現状のツケが出る…という懸念はつきまといます。

 今週はドラフト戦略に的を絞って書きました。ペナントレースはいよいよ9月戦線に入っていきます。大詰めですね。果たしてCS圏は確保できるのか。2位はどうか。「優勝」という言葉が書けないのが残念ですが、今は受け容れるしか方法はないですね。それがプロ野球という勝負の世界の厳しさでもあります。(毎週日曜掲載)

植村 徹也(うえむら てつや)

1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として、阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月曜日~金曜日、午後9時からの「」、土曜日午後6時半からの「ニュース・ハイブリッド」に出演中。

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