巨人・菅野が憂う野球界の未来 野球人口拡大への「壁」

球界ここだけの話(1349)
菅野は先月、西日本豪雨被害を受けた岡山県倉敷市真備町の少年野球チームと交流会を行い、子供たちに野球指導した

 いつからだろうか。近所の公園で野球ができなくなったのは…。記者が小学生の頃は友達を誘い、バットとグラブ、ボールを持ち寄って公園で野球をするなんて日常のこと。だが、いまでは公園で「ボール使用禁止」などの文字を見ることが増えた。

 それに比例してか、野球の競技人口の減少は進んでいる。日本高校野球連盟(高野連)は6月、全国の野球部員数と加盟校数(5月末現在)を発表。硬式野球部の部員は、昨年度より8389人少ない15万3184人で、4年連続の減少となった。軟式野球部の部員も同548人減の8755人で5年連続の減少。歯止めはきかない。

 もちろん、総人口の減少、少子化のことなども関わってくる。果たしてそれだけだろうか? 巨人・菅野智之投手(28)は野球界の未来を憂い、「環境の充実」を訴える。

 「最近は公園でバットが使えないし、ボールを使っちゃいけないとなっている。僕が小さい頃なんて、みんなバットを持って、公園で野球をやっていた。素振りをしていた。キャッチボールもできた。いまはそれができないんだから。できる場所がないのに、どうやって(競技人口を)増やしたらいいのか。空き地もいっぱいあるし、ここなら使っていいですよとか。そういうこともできると思うし、絶対に環境だと思う」

 確かに、その通りだ。今では子供たちが野球をできる環境はない。もちろん少年野球チームなどの門戸は開いていると思うが、そもそも野球というスポーツに触れたことがない子供たちにとっては、公園や空き地での野球が“出会い”であり、“スタート”。その場を奪ってしまっているのが大人たちなのだ。

 「環境をまず整えないと。だって、野球に興味がない子も、野球をやっていたよ。『混ぜてー』って。その場もないんだから。やってみたら楽しい。じゃあ野球チームに入ってみようかなって。そこからだと思う。入ってみてお金がかかる。そうなったところで僕らの手が差し伸べられる。お金がない。道具が買えない。選手会の人が基金を作ってくれて野球を続けられた。将来、プロ野球選手になって恩返ししたいなって。それが底辺拡大だと思う」

 巨人の選手会長である菅野も参加するプロ野球選手会でも、競技人口拡大のためにさまざまな活動をしている。幼稚園訪問や野球教室。話し合いの場では「子供たちが野球に関心を持つきっかけを増やす」ことについてなどの意見交換も行われている。だが、プロの選手たちがつかの間の休日を使い、必死に意見を出し合い、休養日やオフシーズンにイベントを行っても、実際に野球をやる場所がないのでは元も子もない。

 だからこそ、まずは環境の整備が必要なのだ。空いている空き地でもいい。公園を時間制で使用を許可するのでもいい。たしかに金属バットやボールは危ないだろう。サッカーボールのほうが幾分か安全だろう。だが、大人たちの都合で、子供たちが思う存分遊べる場を奪ってしまってはいけないと思う。ただでさえ、いまは外で遊ぶ子も減っている。そんな中、「外で野球がしたい」と叫ぶ子に、大人たちが手を差し伸べてあげなくてどうするのか。1人ではできない。市区町村や自治体ごとで、そういう場所を増やしていってほしい。

 「じゃあ、なんでゴルファーが世界で苦戦を強いられているのか。アメリカでは、どこでもゴルフコースがある。10ドル、20ドルで芝の上から打てる。僕は思いますよ。小さい頃からこの環境なら絶対勝てるって。根底のところを考えないと、絶対に無理。幼稚園訪問や野球教室を見て、野球をやりたいな、楽しそうだなと思ってもできない。やる場所がなくて」

 子供たちのためには何が必要なのか。菅野は、試合前日などにも球場を訪れた子供たちやファンのサインの要望に応え、笑顔でペンを走らせる。環境を整えることと同時に、子供たちの興味を引く努力が必要だということをしっかりと認識している。プロ野球選手だからこそできることを。

 「ローテーションで投げた投手や選手が、ファンサービスをすればいいと思う。そっちの方がよっぽどうれしいよ。子供たちが何が楽しいのか分かっていない。何してもらいたいって。自分たちの収益上げて、それがみんなのためになるんじゃない。ボール拾いを一緒にさせてあげるとか。グラウンドを見学させてあげるとか」

 プロ野球を観戦する人の数は近年、増えている。球団の企業努力があり、選手会を中心とする選手たちの努力もある。それだけ、まだまだ野球に魅力があるということだ。だからこそ、「大人たち向け」の野球ではなく、子供たちにも目を向けた努力をしてほしい。

 でなければ、将来、野球を観戦する人が増えても、プレーする選手が減ってしまうような事態にならないとも限らない。「野球人口を拡大したい思いはもちろんあるよ。みんなある。でも、僕たちだけでは限界がある。プレーで魅せるのは当たり前」と菅野。選手たちだけではどうにもならない「壁」があるのは確かだ。1、2年先ではない。5年、10年、20年先を考えて、ぜひ子供たちへの環境を整備してほしい。それが必ずや、大人たちに返ってくるはずだ。(赤尾裕希)

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