ヤクルト・石山の忘れられない思い出 担当スカウトの小田義人さんが珍しくアルコール注文

球界ここだけの話(1299)
ヤクルト・石山を気にかけていた小田義人さん 

 ヤクルトの元スカウト部長、小田義人さん(享年71)が5日に肺がんのため死去した。訃報を受け、ショックを隠しきれなかったのがヤクルト・石山泰稚投手(29)だった。

 ヤマハから2013年にドラフト1位で入団した際、担当スカウトだったのが小田さんだった。12年の都市対抗は1回戦敗退。全国的な知名度は低い中、小田さんだけが素材を信じて何度も練習場に足を運んでくれた。「小田さんがいなかったら、プロの世界に入れなかった。感謝してもしきれない」と故人をしのんだ。

 石山には忘れられない思い出がある。プロ入りが決まった直後の食事会。下戸だという小田さんが、珍しくアルコールを注文した。「今日はお前のお祝いの席だから。特別だよ」。うれしそうにグラスを傾けながら「プロに入ったら、酒や女にだけは気をつけろよ」と何度も注意してくれた。

 入団1年目から60試合に登板し、球宴にも出場した。「活躍すれば、獲ってもらったスカウトの方を見る目も変わる。『小田さんのためにも』という思いがあった」と石山。そんな思いを知っていたのだろうか、小田さんは「1年目から結果を残せて良かったなあ。ありがとう」と心から喜んでくれた。

 「どうだ? 頑張っているか? 体は大丈夫か?」。以降も食事の席や電話をすると、決まってこの言葉で気づかってくれた。小田さんがスカウトを退任し、母校・静岡高の外部コーチに就任した際も、電話口からいつもの言葉が聞こえてきた。

 「体調を崩されたと聞いて、最近は連絡するのを控えていたんです。いつか(静岡の)お墓参りに行けたらと思っています」と石山。今季は守護神として2勝0敗9セーブ、防御率0・91と活躍を続けている。「どうだ? 頑張っているか? 体は大丈夫か?」。悩んだ時や、心が折れそうな時。目をつぶれば、優しい声が聞こえてくる。(長崎右)

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