敗戦処理…その1球は重くて、熱い

佐藤春佳のスポーツブレーク
巨人・宮国

 乾いた拍手で迎えられるマウンドがある。目の前に火のついた相手打線。後ろの野手は疲弊している。大差のビハインドでのリリーフ=敗戦処理。英語では後始末をする、という意味で『mop up man(清掃員)』と呼ぶ。

 「僕にとってはすごく大事な場面。どんな役割でも1軍で投げられる喜びを感じてやっています」と話すのは巨人・宮国椋丞投手だ。

 今季は勝ちパターンにつなぐ役割も担い、防御率0・66。信頼を重ねる道程も、原点は敗戦処理だ。2013年に開幕投手を任された右腕が、中継ぎに活路を見いだしたのは15年。「こういう場面こそ絶対に抑えないといけない」という豊田清投手コーチの言葉を胸に、防御率のノルマを自身に課すなど、どんな場面も緊張感を保つ工夫をしてきた。

 その豊田コーチは西武での現役時代、忘れ得ぬ思い出がある。1軍登板なしで迎えたプロ3年目の1995年5月。テレビで見ていた1軍のオリックス戦(富山)の0-9の場面で、東尾監督がファンサービスの意味で野手のデストラーデをマウンドに送った。

 「野手でも投げられる1軍のマウンドが自分にはすごく遠い。敗戦処理でもいいから自分に投げさせてくれ、と。悔しいし、うらやましかった」

 後に通算157セーブを挙げた『守護神』の出発点は1軍マウンドへの渇望。だからこそ今は、“ビハインド”からはい上がる若手の闘争心に期待し、背中を押す。

 「かっこ悪くても0で抑えて帰ってくることだけ考えています」とDeNAの三嶋一輝投手は言う。4月21日のヤクルト戦(神宮)で3回5失点と炎上した先発・バリオスに代わり登板。3回無安打4奪三振の快投が打線に火をつけ、チームは逆転勝ちをもぎとった。

 「1週間準備して先発しても結果が出ないのは僕も経験している。誰かがカバーできれば、チームも先発投手も救える」

 1年目から22試合に先発し、14年は開幕投手を任されたが、以降はトンネルに迷い込んだ。昨季から転向したブルペンで「1球で人生が変わる。それが中継ぎだ」という言葉を聞いた。鉄火場に挑む仲間に学ぶうち、先発時代のプライドは氷解していった、という。

 「もっといい場面で投げたい、とかは、今の自分を確立した後からついてくる。毎日難しいけれど、今は戦いの場にいられることがうれしい」。気を緩めれば奈落が口を開けて待つ。“ビハインド”から歩む再起の道。その1球は重くて、熱い。

佐藤 春佳(さとう・はるか)

 サッカー、アマチュアスポーツ担当として2004年アテネ五輪、10年バンクーバー冬季五輪を取材。プロ野球は05-07年に巨人を担当し、13-15年はヤクルト担当キャップ。趣味は宝塚観劇。

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