日本ハム新本拠地、成功の鍵は地域に根づく「街づくり」

池田純 S-Businessの法則

 春の訪れとともに日米で野球の熱気が高まる中、目に留まったのが日本ハムの本拠地移転の話題です。2023年の開業を目指す新球場の建設候補地に、北海道北広島市が選ばれました。

 DeNAの球団社長時代、約74億円で横浜スタジアムの運営会社買収に成功しました。自立した経営を目指す上で、自前の球場を持つことはトレンドですが、日本ハムのように球場を一から建設するとなると、税金面の優遇措置などがあるとはいえ、投資額(試算で500、600億円)の回収は容易ではありません。

 総人口で約196万人の札幌市に対し、北広島市は約6万人。球場に熱を生むには、支えてきてくれた北海道、札幌のファンにどれだけ北広島まで来てもらえるか。そこで、構想の成功を願う一人としてキーワードとしたいのが「心のどこでもドア」です。

 札幌と北広島は約20キロ、JRで約16分とさほど遠くありませんが、マーケティングの世界では物理的距離より心理的距離が重要とされます。中田翔内野手は「北広島は知っている。アウトレットがあるから」と発言していました。その言葉が表すように、両者には意外なほど心理的な遠さがあるように感じます。

 新千歳空港に近くインバウンド(訪日外国人)を期待する声もありますが、あくまで“一見さん”。重要なのは地域に根差し、あまねく共感を得る「街づくり」です。

 印象に残っているのは13、16年に視察した米大リーグ、カブスの本拠地シカゴのリグリーフィールドの事例です。中心部からやや離れた場所にありますが、ショッピングモールやホテルを含め、野球をきっかけにした心の距離を縮める「街づくり」に、球団が積極的に関わっていました。

 DeNAでは、横浜スタジアムのバックスクリーン裏を整備し、公園から球場内が見える「ドリームゲート」を開設。グラウンドを地域住民にキャッチボール用に開放するなど、球場外でも「野球のある街」を常に感じられる仕掛けを意識しました。コンクリートの壁の中に入ったら野球を見せてやる-。そんな時代は終わっているのです。

 人口減少のフェーズで重要なのは「心のどこでもドア」を「街づくり」の観点で、どれだけつくりまくれるか。スポーツビジネスの一つの方向性が、そこにあります。

池田 純(いけだ・じゅん)

 1976(昭和51)年1月23日生まれ、42歳。横浜市出身。早大商学部を卒業後、住友商事、博報堂などを経て2007年にディー・エヌ・エーに執行役員として参画。11年12月にプロ野球DeNAの初代球団社長に就任し、16年10月に退任。現在はスポーツ庁参与、スーパーラグビー・サンウルブズCBO、明大学長特任補佐、さいたま市スポーツアドバイザーなどを務める。

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