面接で落ちないコツは「分解しまくる」

二十歳のころ 南場智子(3)
マッキンゼーの最終面接当日の南場オーナー。津田塾大の学生寮にて (南場智子氏提供)

 留学から帰国したのは大学4年の5月ころ。周りは皆、就職活動をしていました。分厚いリクルートブックを見る気もせず、社会に出るとはどういうことなのか分かっていませんでした。

 留学中には、経済学者になりたいと思った時期もありました。成績も良く、特に数学は得意で、センスがあるのではないかと。ただ、先生に「もう少し進んでみないと才能は保証できない。あと1年、勉強しなさい」と言われて少し冷静になりました。1年で帰ることが条件だったので、選択肢はありませんでした。

 そんな時、マッキンゼー(米国に本社を置くコンサルティング会社)に就職した大学の先輩から「(試験を)受けにおいで」と誘われたのです。何の会社かも知らず説明会に行くと立食パーティー形式で、何だかみんな輝いていて格好良い。ミーハーな気持ちでした。

 まず、最初にIQテストのようなものがあって大勢落ちる。次は6人のグループ面接で5人が落ちる。そうやって残っていくと気持ちよくなってきて、最後は訳も分からず絶対に内定をもらうしかないという気持ちになっていました。

 私は“賢いふり”をするのが得意で、面接は落ちたことが一度もありません。コツは「分解しまくる」こと。マッキンゼーの面接では、社会問題からカリフォルニアワインの販売促進まで、いろいろなケース(事例)を聞かれましたが、こういう見方とこういう見方、こんな見方もできると要素を分解し、最後は自分の知っている話にちゃっかり持ち込みます。

 「世界中にゴキブリは何匹いるか」といった質問もありました。そこで得意の計算です。「目にする30倍はいると言いますよね」。そう前提条件を示して「私は年に何匹見るので…」とガルル(=一生懸命なことを表す造語)。他の計算方法も、立て板に水のごとく何通りも披露します。現実の世界では全く役に立たないですよね。結果、首尾よく合格。今は何万人が志望すると聞きますが、その時は300-400人から4人が内定をもらいました。

 ただ、入社してみると、ビジネス慣れしている同期に比べて明らかに自分は駄目。生保と損保の違いも分からないくらい無知で、指示の意味を理解するのも大変でした。忘れもしない最初の指示は「日本のモーゲージのセキュリタイゼーションの市場性を調べよ」というもので「日本」と「調べよ」以外の単語は一つも分かりませんでした。一事が万事、この通りで、毎日夜中の3、4時まで仕事をし、睡眠時間は2時間くらい。倒れて病院で注射を打ったこともありました。

 必死だったので、評価は最悪ではなかったようですが「お前のバリューを出せ」と言われる会社なので、自分の価値を出せないことが一番辛かった。肩に力が入って空回り。2年間頑張ったけれど、もう駄目でした。

 持ち前の“頑張りズム”で苦しい時期を乗り越えた-。そんないいストーリーではなく結局、逃亡してしまったのです。 (あすに続く)

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