東京・両国には大相撲の聖地・両国国技館がある。クラフトビールの聖地と呼ばれるポパイもある(ポパイについては連載92、連載93をごらんください)。そして、下町エリアの角打ちの聖地・大橋屋酒店もある。
なんて書いたが、3つ目は僕が勝手に「聖地」と呼んでいるだけ。僕の落語鑑賞の師匠でもある相棒(クラフトビールの飲み歩きに付き合ってくれる人を僕はそう呼んでいる。つまり飲み仲間)に教えてもらわなければ、その存在すら知らなかった。が、連れていってもらってすぐに気に入ってしまった。
まず、家族経営のお店の人たちがみんな優しい。次に、大手のメジャーなビールだけでなく、クラフトビールが置いてある(うちゅうブルーイングと箕面ビールは常設のようだ)。そして、すぐ近くの両国国技館でやっている大相撲の中継を飲みながら見ることができる。相棒がここに誘ってくれたのも、その2番目と3番目があるからだった。場所中でも、仕事を終えた行司さんら相撲関係者が訪れることがあるという。
最初に訪れたのは、大相撲初場所が開催中の1月。亀戸で円楽一門会の寄席を見てから徒歩で向かった(2人とも歩くのを苦にしない。というか好きだ)。相撲部屋の前を通るなどの寄り道を楽しみつつ到着すると、角打ちの開店前だったので、両国駅下の立ち飲み店で大相撲中継を見ながら一杯引っかけて再び大橋屋酒店へ。
まずはうちゅうブルーイングの「ツリーオブライフ」をチョイス。レジに持っていって精算すると(クレジットカードOK)、持ち帰りと同じ料金だった。「高いもの(お酒)には(追加料金=角打ち代)を取らないんです」と店主。それはありがたい。なんて良心的なんだろう(正確な金額は失念したが、追加料金も20円くらいだ)。
グラスにツリーオブライフ(DDHDIPA=ダブルドライホップダブルIPA)をトクトク。おっと手元が外れてこぼしちゃった。すみません。見た目は薄めの黄色いヘイジー。鼻を近づけるとフローラルの香りが漂う。甘さ控えめで苦みしっかりのドライ系ヘイジーだった。大相撲中継を見ながらツリーオブライフを飲むというのは、なんとなくミスマッチ感があって面白い。
大関の取組が始まった頃、相棒の知り合いの行司さんがやってきた。酒を飲みながら行事さんの解説付きで大相撲中継を見られるとはなんという至福! 常連さんとも仲良くなれたし、病みつきになりそうだ。
2度目の訪問は両国国技館で夏場所が開催中の5月。もちろん同じ相棒とだ。この日もまずはうちゅうのビールをチェック。ラベルの真ん中にある「7」の数字が目立つ「New Journeys Begin(ニュージャーニーズビギン)」という見慣れない缶にした。見た目はクリアなやや薄めの黄色。浮かれていたのかメモを取らなかったが(不覚!)、すっきり系のホッピーなIPAだった記憶がある。
缶に<うちゅうブルーイング7周年を記念したスーパーコラボレーションシリーズ><アメリカ・カリフォルニアのスーパーブルワリーGreen Cheek Beer Co.と一緒にDDH CALIFORNIA IPAを仕込みました>とある。ネットで調べたら<青苦い爽快なDDHカリフォルニアIPA>とあったからグラッシーなIPAだったようだ。
相棒の知り合いの行司さんが来たのは、そろそろ結びの一番という頃だった(ご自身の裁きは3時間以上前に終わっているが、いろいろ事務仕事などがあって忙しいそうだ)。その後、サッポロ赤星、日本酒を経て箕面ビールの「おさるIPA」と「PALE ALE(ペールエール)」を飲んだ。新たな常連さんとも知り合いになり、和気あいあいと飲めるのがなにより楽しい。
7月に訪れたときはまだ大相撲名古屋場所が始まっていなかったが、相棒(もちろん、1、2度目と同一人物)の知り合いがたくさんいて楽しかった。さらに、米国から来た20代男性の友人グループが角打ちを楽しみにきたことで国際色豊かに。この日は浅草演芸ホールでビールを飲みつつ寄席を楽しんでから隅田川添いを歩いてやってきたので、ビールをパスしてハイボールでスタート(だから写真はない)。その後、日本酒を飲んで閉店の午後9時まで居座ってしまった(立ち飲みだけど)。それだけ居心地がいいのだ。
相棒と僕の共通の知り合いである島本慶さんも相棒の紹介で大橋屋酒店を訪れ、週刊大衆の人気連載シリーズ「おとなの居酒屋」で取り上げた。そこで島本さんもこうつづる。
<たまに見かける、周囲の人間を寄せ付けない、難しそうな客も皆無。むしろ、ご主人と客同士が談笑したりして、和やかな雰囲気です。><そのため初めて入った店でよく味わう、あの独特の緊張感もないからいいね。(中略)すっかりなじんじゃいました。>
そう。そういうお店なのだ。
島本さんの「おとなの居酒屋」によると、大橋屋酒店は1895(明治28)年創業で、店主の大橋英一さんは4代目。<なんでも、ご主人が子供の頃にはやっていたが、途中で止めた角打ちを、懐かしくなって2019年に再開して今に至るんですと。>ということらしい。
秋場所の頃に再訪したい。と言いつつ、その前に訪れそうな気がする。(随時掲載)
■鈴木 学(すずき・まなぶ) サンケイスポーツWEB編集長。第1次東京五輪世代(第2次は2021年に誕生した)。1993年2月にサンスポの競馬担当となり、2年間のブランク(運動部デスク)を挟んで競馬にどっぷり漬かっている。現場記者時代は紙上で予想コラム「鈴木に学べ」を連載も、たまに「鈴木が学べ」に。現在は、「サンスポZBAT!競馬」にてWEB限定長編予想エッセー「居酒屋ブルース」を連載中。競馬は仕事で、クラフトビールの飲み歩きが趣味。