6月11日、大阪・関西万博ドイツパビリオンの〝自身〟のキャラクターとともに記念撮影におさまるサッカー元日本代表主将の長谷部誠氏 【No Ball、No Life】サッカー元日本代表主将で、現在は日本とドイツの2カ国で指導者を務める長谷部誠さんが6月11日、大阪・関西万博のドイツパビリオンで行われたイベントに出席。一般公開のステージとメディア対応を合わせて2時間以上も話を伺った中で、日本代表スタッフでありながら現役時代に所属したドイツ1部フランクフルトのU-21でも指導する長谷部コーチの「ドイツの育成事情」に関する見解から始まる展開が特に興味深かった。
ドイツの育成を長谷部コーチの視点で語る際、キーワードのひとつになったのは〝ゲルマン魂〟とも形容されたメンタリティーの部分だ。ステージで長谷部コーチは「ドイツの育成も山あり谷ありで、2014年のW杯(ブラジル大会)で優勝して、そこまでの育成はすごく良かった。その後から現状は難しい時期。客観的に見ても自分が中にいて感じるところでもある」と分析。そのうえで「昔の日本でも流行っていたゲルマン魂やメンタリティー、そういうものは時代の中でドイツでもちょっと受け入れられなくなって。メンタリティーの強い選手が育たない課題は今の育成問題ですごくある」と話した。
現役時代はドイツ3クラブで17年間プレーし、引退とともにドイツで指導者のキャリアをスタートしている長谷部コーチだからこそ伝えられる実感があると感じた。〝ゲルマン魂〟は決して生まれつきある基底的なものではなく指導が影響する教育的なもので、今それが危機にあるという感覚を掘り下げたくなった。
フランクフルト時代の長谷部誠氏(2022年11月19日撮影)指導のあり方と選手の変化について聞くと「社会的なものだと思います。それがサッカーにももちろん影響しているし、そういう時代の流れになっている」と話す。続けて「例えばキミッヒなんかはそういうメンタリティーを持っていると思う」と現ドイツ代表主将の名前を挙げつつ「そういう選手はいるけど相対的に少ないと思うし、トレーニングでも今は指導者の道にいって葛藤があります」と自身が直面している指導に引き付けてさらに答えてくれた。
「今はGPSをつけて(活動を)管理されて、練習中にフィジカルコーチがiPadを持って、監督と話して『ちょっと今日はやりすぎだから』みたいな時代になってきている。その理由のひとつはけがをしないとかがあると思うんですけど、サッカーはデータだけじゃなくてメンタリティーだったり、勝負を分ける最後のところではそういうものが大きいと思っているので。そういうものを植え付けるのはトレーニングの中でもあると思うので、指導者としてどうバランスをとるか探しているところです」
実現できているかどうかはともかく、行き過ぎた根性論にスポーツが支配されていた時代は捨て去るべき過去だといわれて久しい。代わりに頼られるものの存在として科学的な客観性を持つとみなされるデータがある。