9月22日の阪神ー巨人の三回、打席でボール球を見送る阪神・才木浩人=甲子園球場 野球のルールでは審判員の裁定は「最終的」で「誤審」という概念はない。だから22日の阪神-巨人での阪神・才気浩人投手の「バント空振り疑惑」を「誤審」というつもりはない。ただ、あの場面を繰り返しビデオで見るにつけ、ハーフスイングの判定の仕方に問題を感じざるを得ない。
場面は両軍無得点の三回1死一塁。ビデオで何度見ても、才木はスリーバントを試みてバットを出して、空振りしている。本人も三振と思ってベンチに帰ろうとした。ところが球審が一塁塁審に確認を求めると、セーフの判定だった。
結局この後、仕切り直して才気が送りバントを成功。その後の連打で1点を奪うと、試合はそのまま1-0で阪神が逃げ切った。
アンパイアの技術の問題を論ずるつもりはない。ハーフスイングは「明確な基準がなく、あくまで感覚で判断するしかないので、最も難しい判定の一つだ」という話を審判員から聞いたことがあるからだ。ただ問題はそんなに難しい判定ならば、リクエストの対象とすればいいと思うが、対象外となっていることだろう。
リクエストの対象はアウトかセーフか、フェアかファウルかなど「事実」をビデオで確認できるものというのが基本的な考えだ。一方でハーフスイングは事実ではなく、どこまで振ったらスイングなのかという「判断」で、明確な基準もない。ビデオで検証するのはあくまで「事実」であり、審判員の「判断」は検証しないということである。
ただ、そういう微妙な判定ならば、なおさらリクエストの対象としてビデオを活用すべきではないか。審判員が正確な「判断」を下すための、材料としてビデオを利用すべきではないだろうか。あえて書くが、今回の才木もビデオで見れば、バントをするためにバットを出しているのは明確である。優勝争いで過熱した甲子園球場の異様な雰囲気の中で、瞬時に「判断」しなければならない難しさは想像がつく。ただ、だからこそだ。今回だけでなくハーフスイングの「判断」のために、リクエストの対象として万全を期すべきである。(スポーツジャーナリスト)
■鷲田康(わしだ・やすし) 1957(昭和32)年生まれ。埼玉県出身。慶大から81年に報知新聞社入社。巨人キャップとして長嶋監督誕生、松井秀喜入団などを取材。2003年にフリーとなりプロ野球、米大リーグなどの取材、執筆を行う。著書に『10・8 巨人vs.中日 史上最高の決戦』『長嶋茂雄 最後の日。1974.10.14』(いずれも文藝春秋)などがある。