ナカジマジックを打ち破った! 「SMBC日本シリーズ2023」は1日、甲子園で第4戦が行われ、阪神がオリックスに4―3でサヨナラ勝ちした。九回1死三塁から2連続申告敬遠で満塁策をとられた4番・大山悠輔内野手(28)が左前にサヨナラ打。敵将・中嶋監督のタクトをはね返し、対戦成績を2勝2敗の五分に戻した。1985年以来の日本一へ、絶対に負けない!
快音を残し、白球は三遊間を抜けた。甲子園が嵐のような大歓声に包まれる。勝利の女神はどちらに微笑んでもおかしくなかった。日本シリーズにふさわしい白熱の熱戦を4番・大山が決めた。
「一人一人、必死ですし、勝つために一つになってやっている。とにかくどんな形でも勝ったことが一番。チームみんなでつかみ取った」
3-3で迎えた九回。1死から四球で出塁した近本が2度の暴投で三塁まで進んだ。中野はフルカウントとしたところで申告敬遠。さらに、オリックス・中嶋監督は先制打を放った森下も歩かせ満塁策をとった。どよめく甲子園。ただ、ネクストバッターズサークルでじっと戦況を見つめた虎の4番は冷静だった。
「ランナーをかえせば勝ちだったので、それしか考えていなかった」
息を吐いて打席へと向かう。ワゲスパックは3球連続ボール。4球目を見逃し一度は一塁へ歩きかけた。判定はストライク。気持ちを整え、ファウルでタイミングを合わす。フルカウントから148キロ直球を振り抜いた。
低く鋭く放たれた打球は黒土を弾み、左翼芝生に転がる。待っていたのは歓喜のウオーターシャワー。仲間たちからの祝福にびしょぬれになった。球団では金本知憲が2003年、ダイエーとの日本シリーズ第4戦で放って以来のサヨナラ打。17年にドラフト1位で入団したときの監督に続いた。
日本シリーズは4試合で打率・188(16打数3安打)と決して状態がいいというわけではない。最後の打者となった第3戦(10月31日、甲子園)の試合後も「ありがとうございました」と口数少なくクラブハウスへと引き揚げた。ただ、シーズン中から貫き通した己のスタイルは変わらなかった。2-1で迎えた五回1死一、三塁の好機。ボテボテの遊ゴロに全力で走った。併殺崩れ。泥臭くもぎ取った今シリーズ初打点だった。
「どんな形であれ得点する。1年間しっかり走り切る。それをやってきた成果が出たと思う」
プロ入り後から徹底してきたのが、全力疾走だ。勝利のために、やるべきことを最大限の力で、表現する。そんな4番が中心で構えているからこそ、競り負けない。
「この先どうなるか分からない。(甲子園)最後か、まだあるか僕たち次第。先のことよりもあしたの試合勝つだけです。またチーム一丸で頑張ります」と大山。サヨナラの余韻に浸ったのは一瞬だけ。岡田監督も「あそこでもう打たなあかんやろ」と全幅の信頼を寄せていた。八回途中には左脇腹筋挫傷から湯浅が139日ぶりに1軍登板を果たし無得点に抑えた。絶対に負けられない一戦で主砲が応えた。もう足踏みはいらない。38年ぶりの日本一まで、大山が全力疾走する。(原田遼太郎)