サヨナラ打を放った増田大(右)と抱き合う門脇。巨人がCS進出へ執念をみせた(撮影・長尾みなみ) 巨人が18日、ヤクルト24回戦(東京ドーム)で延長十二回の末、4-3で2試合連続のサヨナラ勝利。増田大輝内野手(30)が決勝打を放った。サヨナラ勝ちは今季10度目で、球団では1968年(14度=球団記録)以来55年ぶりの2桁。4時間28分に及んだ総力戦を全員野球でもぎ取った。3位DeNAを2.5ゲーム差で追う4位からの逆転でのクライマックスシリーズ(CS)進出へ望みをつないだ。
増田大(右から3人目)のサヨナラ打に巨人ナインは喜びを爆発させた(撮影・長尾みなみ)ナインがベンチから身を乗り出し、一球一打に声を上げる。最終盤の雰囲気は、さながら高校球児のようだった。全員野球で熱戦を制し、原監督が顔を紅潮させた。
「いろいろありましたけど、勝てたのが全てではないでしょうか」
3-3の延長十二回。先頭で代打として出場した北村拓が左翼線二塁打を放ち、1死一、二塁から増田大が前進守備の右中間を破る一打で試合を決めた。俊足が売りの30歳はバットを短く持ち、田口の速球に食らいついた。指揮官の胸に抱き寄せられ「粘って粘って勝てたことがうれしい」と破顔した。
8人の投手をつぎ込んだ総力戦だった。1点リードの九回は17日に戦列復帰した大勢が連投を避け、逃げ切りに失敗。5番手の中川が同点に追いつかれた。ベンチに残った選手は大勢と捕手の小林のみ。CS進出に向けて死に物狂いで勝利をもぎ取り、原監督は「全員の力で何とかというところ」と息をついた。
12回、サヨナラ打を放った増田大輝(右)を迎える巨人・原辰徳監督=東京ドーム(撮影・斎藤浩一)4位で迎えた後半戦初戦となった7月22日の試合前。指揮官は全体ミーティングで「道険笑歩(どうけんしょうほ)」という造語を伝えた。元WBC世界スーパーフライ級王者の徳山昌守がつくった言葉だ。
「どんなに険しい道も笑って進もう。勝ったら勝ったで明日に進み、負けたら負けたで反省して前向きに行こう」
坂本や大勢ら主力が負傷離脱したまま前半戦を折り返し、状況が好転しないまま9月を迎えたが、ナインは下を向かなかった。この日スポットライトを浴びた増田大や北村拓は、1軍と2軍を行き来してきた伏兵だ。それでも早出練習を欠かさず、ここぞでチームを救った。
原監督が「縁の下の力持ち。真面目に練習してきたのが結果に出てよかった」と言えば、「毎日頑張っていてよかった」と増田大。残り10試合。厳しい前途であろうとも、原巨人は笑みを忘れずに進む。(鈴木智紘)