パスを出す流。正確なキックで日本を何度も前進させた(撮影・福島範和) ラグビー・ワールドカップ(W杯)フランス大会1次リーグD組(18日、イングランド34-12日本、スタッド・ド・ニース)1次リーグが行われ、D組の日本はイングランドに12―34で敗れた。1勝1敗で勝ち点は5のまま。イングランドは2連勝で同9とした。対戦成績は日本の11戦全敗。金星は奪えなかったが、先発したSH流大(ながれ・ゆたか、31)が巧みなキックでチームをもり立てた。日本は28日(日本時間29日)にサモア、10月8日にアルゼンチンと戦う。B組は前回覇者の南アフリカがルーマニアに76―0で大勝し、2連勝。C組でフィジーがオーストラリアを22―15で破った。
後ろ向きの体勢からキックする流=ニース(ゲッティ=共同)キックを多用するイングランドに対抗し、正確な足技でスペースを突いた。SH流は後半25分に交代で退くまで、日本の攻撃を引っ張った。
「勝つチャンスはあった。ちょっとしたところの差でプレッシャーを感じ、相手に主導権を握られてしまった」
チーム最多14本のパントキックで味方を何度も前進させた。後半開始早々には、後ろ向きの体勢から防御裏に蹴るトリッキーなプレー。効果的な攻撃にはつながらなかったものの、以前から練習していた秘策で観客を驚かせた。
2019年W杯日本大会は全5試合に先発し、日本初の8強入りに貢献した。だが、そこからの4年間は順風満帆ではなかった。
21年にはモチベーションが低下し、代表参加を辞退。首脳陣の信頼を失ったり、定位置を奪われたりすることも覚悟の上で「代表という場所は、心も100%じゃないといくべきところじゃない」と意志を貫いた。
復帰を考えると、今度は体が悲鳴を上げた。昨夏は内臓系の病気で代表合宿を途中で離脱し、すぐさま入院を余儀なくされた。
3歳上の兄・大輔さん(34)は「辞退したとき以上の気持ちを持って迎えた(昨夏の)合宿で、離脱でした。結構しんどかったんでしょう」と弟の心情を察した。
それでも流は「また戻れると思っていた。あまり悲観的にはなっていなかった」。その言葉通り、数カ月後にはグラウンドに戻ると、4年前より余裕を持ってプレーできるようになった。
「100%の準備をして次のサモア戦は勝てるように頑張る」。今大会が最後の代表活動と宣言する2度目のW杯で死力を尽くす。
■流 大(ながれ・ゆたか) 1992(平成4)年9月4日生まれ、31歳。福岡・久留米市出身。小2から「りんどうヤングラガーズ」でラグビーを始め、牟田山中―熊本・荒尾(現岱志=たいし)高―帝京大を経て2015年にサントリー(現東京SG)入り。17年4月の韓国戦で日本代表初キャップを獲得し、36キャップ。166センチ、75キロ。