内閣改造は特にサプライズはなく、想定通りだった。来年の総裁選を考えて、支えてもらいたい派閥の領袖(りょうしゅう)と対抗馬になりそうなライバルを閣内と党幹部に封じ込めたいとの意図が強く働いた人事だったといえる。
岸田文雄首相自身以外の派閥領袖である麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、森山裕総務会長を党幹部に据え、ライバルと目される河野太郎デジタル相、西村康稔経産相、高市早苗経済安保相を閣内にとどめた。最大派閥で領袖不在の安倍派は西村氏や萩生田光一政調会長、松野博一官房長官、高木毅国対委員長と同派〝5人衆〟のうち4人を留任させた。森山氏は菅義偉前首相や二階俊博元幹事長に近く、反主流派にも目くばせした人事に映る。
目玉は女性登用によるアピール。党4役の一角、選対委員長に小渕優子元経産相を据え、上川陽子外相、この連載で抜擢を予測した加藤鮎子こども政策担当相ら女性5人が入閣。一方、半数以上の11人が初入閣で、約70人いるとされる入閣待機組を送り出さないと不満分子になってしまうという苦しい事情もあった。派閥、女性、待機組の3点のバランスを考えた「うまい人事」ではある。
ただ、毎回のことだが、首相は人事の狙いを「適材適所」と必ず言うものの、そうとは思えない人も見受けられる。女性閣僚は過去最多に並ぶ5人だったが、副大臣・政務官54人のうち女性は0だった。少し無理しての〝女性活用アピール〟に感じたのは私だけではないだろう。さっそく、小渕氏については過去の政治資金問題でやり玉に挙がっており、世論調査でも起用に批判的な意見の方が多くなっている。
最大のサプライズは閣僚ではなく、首相補佐官として国民民主党で副代表を務めた元参院議員の矢田稚(わか)子氏を起用したこと。国民民主との将来的な連立を見据えてのことだろう。
人事刷新で支持率が回復すれば衆院解散・総選挙を見据えながら、支持率が上がらなくても解散せず来年の総裁選を乗り切ることを重視したバランス人事。果たして奏功するのか。(政治評論家)