変わったのは守備位置だけではない。大成功と言っていい二塁コンバートに加えてもう一つ。阪神・中野拓夢内野手(26)は勇気ある決断を下していた。それは、打撃のスタイルチェンジ。出塁率アップのため、ボールを見極めることを念頭に置いたことだ。
「正直、怖さはありますね。追い込まれる可能性もある。今までは積極的に行っていた分、追い込まれてからのバッティングというのが多くなっているので、そこで怖さはあった」
昨年までは初球から常に積極的にいくことが持ち味の一つでもあった。少ない四球数にも「そこは気にしていない」と自らのスタイルを貫き、プロ2年目はルーキーイヤーを大きく上回る157安打。一方で、出塁率は・321から・301と数字を下げた。
上位打線としての起用が見込まれていた2023年シーズン。このままではダメだと考えを改めた。昨年の契約更改から何度も口にしてきたのは出塁率を上げること。その最善策が、積極性を我慢し四球をもぎ取ることだった。
「自分自身、出塁率を上げるために四球が大事だと思ったので。スタイルを変えるのに勇気はいりましたけれど、そこが今年に関してはうまくいっているかなと思う部分ではありますね」
四球数は昨年の18をすでに上回る28四球。1年目の29を超え、キャリアハイとなることは時間の問題だ。もちろん、積極性を完全に捨てたわけではない。状況に応じて、打って決める場面では積極的な中野が顔を出す。得点圏打率・327の勝負強さには、新旧打撃スタイルの使い分けがうまく働いている。
「粘ってファウルを打ちながらフォアボールをとることもできていますし、余裕も出てきている。あとは調子が悪くなったときにどうなるか。その辺はいろいろと、考えながらやっていければいいかなと思います」
勇気を持って決断したもう一つの〝コンバート〟が、中野拓夢に新たな可能性をもたらした。(原田遼太郎)