第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を射止めた映画「怪物」。2人の少年を軸に物語は展開。その一人、「麦野湊」役で映画初出演の黒川想矢(13)には注目が集まる。黒川は中学進学時に芸能生活から遠ざかることを考えていたが、「怪物」との出会いが運命を変えた。そして俳優、舘ひろし(73)に感化され、道は確かなものに。舘が同映画祭出席に際してタキシードをプレゼントしたほど期待が集まる〝怪物〟級の新星だ。(ペン・梶川浩伸、カメラ・佐藤徳昭)
インタビュー当日、首都圏は大雨。出演作のワンシーンを思い起こさせるようだ。窓から外を見つめる黒川想矢の表情も「麦野湊」。自身、「演じていて、ずっと隣に湊君がいる感じだった」と振り返る。湊との共通点を「言葉で言い表せないんですけど、似ている」と言った後、少し考えてから「僕は湊君になれる。湊君も僕になれる」と表現した。
その真意は「言葉は感情についてくるものだから。湊君をやっているのは僕だから、同じ人物なのかなと思う」。せりふには感情がこもっており、その感情を自分も感じるため、演じているときは「気持ち悪くて、悲しく苦しい気持ちだった」という。
役作りに関して是枝裕和監督(61)から細かな指示はなかった。「監督はどんな役なのかあまり言わなかったです。何度かリハーサルをやって、気持ちを考えていきました」と明かす。
初出演映画が大きな賞に輝くめぐり合わせ。「とてもうれしいです。脚本賞は坂元(裕二、56)さんだけど、自分が受賞したのと同じくらい、誇らしい」とニコニコ顔だ。
カンヌ国際映画祭には「是枝組」の一員として参加したが、海外に行くのも飛行機に乗るのも初めて。舘に贈られたタキシードを身に着けた。舘は憧れの人で現在、芸能事務所「舘プロ」に所属している。カンヌ行きが決まった際、舘から「タキシードをプレゼントするね。おめでとう」と声をかけられた。