侍ジャパン・ドキュメンタリー映画公開記念の舞台挨拶に出席した栗山英樹前監督(撮影=2023年6月4日) 侍ジャパンが第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を制覇した軌跡を追ったドキュメンタリー映画「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」が2日から公開され、4日に公開記念舞台あいさつが行われた。登壇した栗山英樹氏(62)は「僕も見てやばかった。色々な思いがこみ上げてきた」と監督として指揮した同大会の秘蔵映像に涙腺を緩ませ、感慨深げだった。
選手選考から米国との決勝までの歩みの中で印象的なのが、準決勝のメキシコ戦に先発した佐々木朗の表情だ。0―0の四回2死一、二塁で先制3ランを被弾し、日本代表は劣勢に立たされた。四回を投げ終え降板し、ベンチ裏に下がる場面。そして、0―3の七回に吉田が同点となる3ランを放った場面。九回にサヨナラ勝利を収めた場面。それぞれが映す佐々木朗の表情はまるで野球というスポーツを鏡に映しているようだ。
グラウンドに集中していた栗山前監督は映画で初めて佐々木朗の表情を見たといい「俺が思っている以上に選手が責任を背負っている。これから日本を背負う大エースになる人。悔しさ、苦しみを背負ったらもっと大きくなれる。飛躍するきっかけになると信じている」と改めて今後に期待した。
さらに指揮官は、大谷という選手の神髄が映画で垣間見えると強調した。「翔平は自分の頭の中をさらけ出さないタイプ。彼がなぜすごいのかというのは才能、能力だけじゃない。野球脳の部分であるというのは、これを見てもらえば。普段、見ることができない部分でもある。それはぜひ、皆さん楽しんでもらいたい」。大谷が持つ野球観を確かに感じることができる。
「最後はアメリカという壁。アメリカでやっている選手たちの壁があった。それを早く払拭しない限りは日本野球はさらに前に進まないので、そういうみんなの思いが題名に表れている」と映画タイトルへの思いも語った栗山前監督。使命を果たしてなお球界の未来を案じ、行動し続けている。(横山尚杜)