女子ダブルス3回戦で失格となり、涙ぐむ加藤未唯(右)、アルディラ・スーチャディ組=4日、パリ(共同) ■6月9日 プロのスポーツは数あれど、主審の権限は絶大…と思っていた。微妙な判定がVTR検証でくつがえることも含め、最終判断はルールにのっとり主審に任される。だからこそ観客も安心して楽しめる…はずなのに、テニスの四大大会の一つ、全仏オープンで今、主審をないがしろにした騒動が起きている。
例えばの話。サッカーのJリーグの試合中、グラウンドに何かの拍子でボールが同時に2個入り、選手の1人が気を利かせてボールを1個蹴り出した際に偶然、ボールボーイらスタッフを直撃することはまれにある。選手がすぐ駆け寄って当たった人に謝罪しても、主審は当然、注意するだろう。
だからといって、相手チームが「危険行為だ!」と猛抗議した揚げ句、試合の最高責任者・マッチコミッショナーがわざわざ出てきて、主審の頭越しに当の選手に対し「退場だ!」と宣告することはまず、ありえない。ところが、そのありえないことが、全仏オープンで起きた。
4日の女子ダブルス3回戦だ。プレーが途切れた際、日本の加藤未唯(みゆ、28)がコート外に打ち出したボールがたまたま、ボールガールの頭に当たった。直接謝罪したが、危険行為として加藤ペアは女子ダブルスを失格処分に。加藤に不注意な面があったとはいえ、即失格は不当と擁護する声が高まっている。
主審は当初、相手ペアの猛抗議に「故意ではなく、けがもしていない」と説明。加藤に警告はしたが、それだけでは足りないとする相手ペアの失格要求に対し、試合のスーパーバイザー(最高責任者)が現れ、VTR検証もせずに失格を決めた。四大大会は現場で起きたことは基本、主審の権限を最も尊重すべきだ。(森岡真一郎)