1994年5月24日、巨人戦初登板を初完封で飾った藪氏。オマリー㊧らから祝福された 今シーズンからサンケイスポーツ専属評論家に就任した阪神OBの藪恵壹氏(54)が、自身の野球人生を語るコラム「攻め続けた男」(毎週火曜日付)。第10回は、トラ史上初の巨人戦初登板初完封、破竹の6連勝、そして一転、勝てない時期も経験したシーズン1年目の思いを綴る。「ホントなら19勝していた」という根拠は?!
阪神には数多くの大投手がおられました。村山実さん、小山正明さん、江夏豊さん、小林繁さん…。みなさんが伝統の一戦に、並々ならぬ思いで臨まれたと思います。でも、長いタイガース史で、伝統ある巨人戦に初先発で初完封した投手といえば…。実は日本人投手としては私が最初です。後に岩貞が達成(岩貞は入団3年目)していますが、まだ2人しかいないんですよ。
結果から先に言ってしまいましたが、3-0。被安打5の巨人戦初登板初完封でした。
巨人ファンでしたが、あの頃は意外に淡々と投げましたね。マッチアップの槙原(寛己)さんが1週間前に完全試合を達成していましたが「完全試合なんて、一生に一度できるかどうか」という感じでしたし。しかも、早々と三回に新庄(剛志)が先制タイムリー。石嶺(和彦)さんも2点タイムリー。3点を援護してもらって、気持ちよく投げました。
さらに翌週の5月31日、広島戦でも勝って、自身6連勝。5月だけでも5勝無敗。結果という点では、最も勝てた時期でした。
月間MVPも、完全試合の槙原か、5勝の藪か、と新聞紙上で騒がれましたが「僕でしょ」と確信していました。もちろん、僕でしたよ(笑)。
ただ、この頃から、疲れを感じるようになってきました。そりゃ、ほぼ毎試合、完投して、しかも150球近く投げていましたから。当時は中6日での先発でしたが、調整の6日間のうち4度ブルペンに入っていましたからね。
急に勝てなくなりました。6月は1つも勝てずに4試合先発で3敗。それでも8回2失点、4回⅓4失点、9回3失点、6回⅓3失点。今でいえば、3試合はクオリティースタート(6回以上投げて自責点3以内)ですから。援護さえあれば…。
とはいえ、白星から遠ざかったのは事実です。そして、ショッキングな試合を迎えることになるんです。