中田翔の一塁用ミットは、こだわりのバスケットウェブ 「え! 本当にこのウェブでいくんですか?」
ミズノの用具担当者も驚いた発想から生まれた〝中田翔モデル〟が、巷の野球界でブームとなりつつある。
柔らかいグラブさばきにプロの技が光る巨人の一塁手・中田翔内野手(34)が使う小型の一塁用ミットは、オリジナリティーにあふれる。親指と人さし指の間のウェブ(網)と呼ばれる部分が、投手用に多い「バスケットウェブ」という網目状。珍しい逸品に目を奪われた野球ファン、グラブ愛好家もいるのではないだろうか。
「俺は『俺だけの』、『俺しか使ってない』っていうのが好きなのに、めちゃくちゃ増えてきてる」
道具へのこだわりが人一倍強い中田翔は、そうは言いながらも「グラブちょうだいともよく言われるし、みんな『中田さんと同じで』って頼むらしい」と、まんざらでもなさそうだ。実際、同様のモデルを新調した巨人・菊田らプロ野球選手から高校球児、草野球を楽しむ人にまで愛用者は増えている。
中田翔がブランドアンバサダー契約を結ぶ大手メーカー・ミズノ社は、今年から9種類ある一塁用ミットのパターンオーダーに「中田翔モデル」を追加した。硬式用、軟式用、ゴムソフトボール用のいずれにも対応しており、誰でも入手可能になった。ミズノ担当者は「去年までも『中田翔さんと同じウェブにできないか』というお問い合わせが多くなっていました。おかげさまで、たくさんの方に使っていただいております」と注文の殺到ぶりを明かす。最近は発注される一塁用ミットの6割以上が中田翔モデルだという。
始まりは中田翔の日本ハム時代。ミズノ社との冒頭のようなやり取りから、お試し品として作られた。本人が当時を回想する。
「ボールを右手に持ち替えるとき、指が(ウェブの隙間に)入ることがあったんだけど、それが嫌で。試合中もけっこう強い球を受けるから、普通のウェブだと革も伸びるし。最初は(担当者に)『えっ?!』て顔をされたけど、一回作ってみてよって(笑)」
ウェブは軽量化やデザイン性などとの兼ね合いもあり、革やひもの隙間があるのが普通だ。この点が気になった中田翔は、投手用のイメージが強かったバスケットウェブを一塁用ミットに取り付けることを思いついたという。西武・源田ら内野手用グラブにバスケットウェブを採用する選手はいたが、ミットとなれば、斬新なアイデアだった。
「(ボールの)おさまりはすごくよくなった。持ち替えがスムーズにいく。頑丈だしね」
中田翔は昨季、一塁手ではプロ野球史上初となる両リーグでのゴールデングラブ賞(一塁手として5度目)に輝いた。どんな送球も、打球も収まっていくから、そのミットはさらにカッコよく見える。(谷川直之)