六回、大山は佐々木朗の失投を逃さずに仕留めた。これぞ4番の仕事だ (日本生命セ・パ交流戦、阪神2-0ロッテ、2回戦、阪神2勝、4日、甲子園)不動の4番の一振りで、ロッテ・佐々木朗に今季初黒星をつけた。0-0の六回1死三塁。阪神・大山の打球は前進守備の二塁手の頭上を越え、右前で弾んだ。難敵が投じた94球目を捉えたチーム初安打が決勝打となった。
「(中野が)三塁まで来てくれていたんで。あとはもう事を起こすというか、何とか(自分の)バッティングをという気持ちでした」
五回まで出塁は4四死球のみで、毎回の9三振。最速163キロの直球と落差のあるフォークに翻弄された。「真っすぐも速いし、変化球も切れがあってすごかった」。だが、今の猛虎打線はチャンスを逃さない。六回先頭の中野が四球で出塁し、すかさず二盗成功。1死後に大山の打席で、ワンバウンドになったフォークを捕手がはじく間に三進した。再び暴投となれば失点につながる場面をつくると、続く5球目に高めに浮いたフォークを仕留めた。主砲は「チームでもぎ取った1点。ミーティングで話していたことがチームでできた」と胸を張った。
六回の攻撃前。今岡打撃コーチがベンチ前に野手を集めて円陣を組んだ。ミーティングで岡田監督が「きょうだけは見送り三振はOK」と指示していた、佐々木朗攻略法を改めて確認。低めのボール球に手を出さず、球数を多く投げさせることを徹底させた効果はてきめんだった。また大山は試合前、甲子園室内にある打撃マシンの距離をいつもより縮めて打ち込んでいたという。
今岡打撃コーチが「大山の冷静さと打席の中での技術だと思う。本当に価値のある一打」と称賛すれば、岡田監督も「1打席目からボール球を見送って、低めも見極めていた。タイミングは合ってるなと思ってたよ」とうなずいた。
前日は一回に先制3ランを放った大山。この日は日本が誇る剛腕からの決勝打と、2試合連続で奮闘してロッテ連倒に貢献。雨天中止になった2日の代替で5日に行われる3戦目を残し、セ・パ首位対決で勝ち越しを決め、貯金は今季最多タイの18となった。
勝利のお立ち台で大山は「とにかく勝ちたい一心だけですし、本当にみんなが頑張っている成果だと思います」と言葉を紡いだ。個人記録は二の次。アレのために、これからもここぞの一打で貢献する。(三木建次)