ラグビー女子7人制の国内シリーズ「太陽生命ウィメンズセブンズ」が6月3、4日、2年ぶりに東京・秩父宮ラグビー場で開催された。ワールドシリーズで過去最高の総合8位となるなど、最近、躍進著しい女子7人制の現状を見ようと、筆者も会場に足を運んだ。
ながとブルーエンジェルスが2大会連続の優勝を飾ったが、注目していたのは今季からシリーズ4大会全てに出場できるコアチームに昇格したナナイロプリズム福岡だった。
初日のリーグ戦では強豪のパールズに惜敗したが、2勝1敗のグループ2位で翌日の決勝トーナメントに進んだ。準々決勝で再び当たったパールズを破り、迎えた準決勝ではながとに2点差で敗退。3位決定戦では昨年の総合女王である東京山九を4点差で退け、堂々の3位に入った。
指導する桑水流(くわずる)裕策ヘッドコーチ(37)は、2016年リオデジャネイロ五輪で4位となった男子の主将を務めた〝ミスターセブンズ〟。7人制の機微を細かいところまで知るナイスガイだ。チームは久留米大と提携しており、久留米大グラウンドを中心にして活動している。福岡県のラグビーといえば、全国社会人ラグビー第1回大会(1948年度)の覇者・配炭公団、第2回大会優勝の三井化学、そして1950~60年代に全盛を極めた八幡製鉄(のちの新日鉄八幡)が日本のラグビーをリードしていた。現在では東福岡高が高校ラグビーを引っ張る存在。サニックス、コカ・コーラの撤退でリーグワンには九州電力キューデンヴォルテクスの1チームしかいないが、来季の2部昇格を決めて意気上がる。
桑水流氏に「福岡にまた、一輪のラグビーの花が咲きましたね」と話しかけたら、うれしそうに破顔一笑した。
メンバーの中核で存在感を見せるのが、桑水流氏にも負けない〝ミズ・セブンズ〟の中村知春だ。こちらもリオ五輪主将だった35歳。チームではゼネラルマネジャーも兼任する。
日本代表でもワールドシリーズで活躍し、今が最も充実しているように見える。年齢が上がっても成長している部分について尋ねると、「あきらめることができるようになったことですかね」と笑う。
責任感の強さから、かつては何でも自分でやらなくては、という思いがあったという。それが「できないことはしようがない。他の人にやってもらいましょう、と任せることができるようになりました。任せられる子が多くなってきた」。リオでは12チーム中10位という悔しい結果。次の東京五輪では代表メンバーに残れなかった。来年にはパリ五輪が迫るが「五輪の思いは五輪で返したいと思っていましたけど、そういうものでもないかなと」。とはいえ、今の中村は代表にも必要な存在だろう。
法大まではバスケットボール選手。バスケット引退後の2010年から始めたラグビーで、14年目で新たな境地に達した。五輪イヤーの来年もナナイロプリズムには有望な新人が入ってくる予定。任せられる子がさらに増える喜びを、中村はかみしめるのだろう。(田中浩)