2012年11月18日の阪神-巨人OB戦で、監督を務めた阪神OB会長・川藤幸三氏(撮影・山下香) 過去にサンケイスポーツ(大阪版)で連載された、球史の中で輝いた男たちを取り上げる「プロ野球三国志 時代を生きた男たち」をサンスポ公式サイトで再録。今回は2013年1月11-23日に掲載された、元阪神の川藤幸三氏だ。〝球界の春団冶〟の波瀾万丈の物語。レギュラーにすらなれなかった男が、強烈な個性で生き抜いたタテジマひと筋19年の足跡を振り返る。
2012年11月18日。満員に膨れあがった甲子園球場を見渡しながら、タイガースOB会長でもある川藤はつぶやいた。
「この光景を、現役の選手たちがどう感じているか」
その日、ファンは一投一打に大喜びした。1年で一番盛り上がった日といってもいいだろう。阪神―巨人OB戦。江夏豊がマウンドに立ち、藤田平、田淵幸一、掛布雅之が打つ。お客さんを楽しませてこそプロ! 昨季5位。不甲斐ないシーズンに終わった現役に、タテジマの歴史の重みと凄みを見せつけるようなシーンの連続…。そして現役の奮起を期待するOB会長の温かくも厳しい目があった。
大成功に終わったOB戦後、巨人のOB会長でもある世界のホームラン王、王貞治は各所でこう漏らしていた。
「今回は川藤が本当によく頑張ってくれた。ファンにも、後輩の選手たちにも誇れるOB戦ができた。殊勲者は川藤」
伝え聞いた川藤が恐縮する。