岸田文雄首相の長男、翔太郎氏が1日付で首相秘書官を辞職した。公邸内で親族と忘年会を開き、新閣僚のまねのような記念写真を撮っていた様子が報じられたことの責任を取った形。前回5月28日付のこの欄で「意識が低い」と指摘したが、翌29日に父親が事実上の更迭を表明した。
忘年会写真が報じられたことで、「組閣ごっこ」「記者会見ごっこ」「おぼっちゃま」などと厳しい批判が噴出。なにもよりもG7広島サミットで上昇機運にあった内閣支持率が伸び悩んだことが大きかった。報道直後は厳重注意にとどめていたが、一転して更迭となった。
公邸は首相と家族が居住する施設であり、親族の写真撮影くらい目くじらを立てることではないという解釈もある。一方で首相の迎賓、執務機能を有する公的施設でもあり、公的スペースでも「組閣ごっこ」などの写真を撮っていたことを更迭の理由にあげていた。ただ本来は、岸田家が日常生活を送るための施設とはいえ岸田家自身の財産ではなく、首相という重責を担うために国民から一時的に施設を借りているという認識に立たなくてはいけない。
さらに、プライベートな写真がなぜ外部に流出したのかという問題もある。現代は簡単に写真が撮れて、簡単にコピーして配信できる時代。その分、流出もしやすいことは百も承知のはずだ。岸田首相は昨年10月、翔太郎氏の起用理由について危機管理の迅速な報告態勢、SNS発信対応などを勘案したと国会で答弁していた。結果は〝真逆〟だったようで、本当に長男のことを理解していたのか疑問だ。
岸田首相は性格的には他者に優しいとの評を聞くが、身内に甘いという〝見え方〟は明らかにマイナスになる。首相としては宏池会の先達、大平正芳元首相の在任期間(554日)を今年4月に抜き、目指すのは同じく池田勇人元首相の1575日と伝わる。それには、国のために何をするのか明確に打ち出してほしいものだ。近く行われるといわれる解散総選挙で、国民に示してほしいと期待している。(政治評論家)