『サンスポ東京発刊60周年ゲーム』で始球式を行った小暮奏太くん(撮影・荒木孝雄) (日本生命セ・パ交流戦、DeNA-西武、2回戦、4日、横浜)サンスポ東京発刊60周年ゲーム。横浜市鶴見区の元宮ファイターズに所属する小学5年生、小暮奏太くん(10)が始球式を務めた。
名字にちなんだ「590(コグレ)」のユニホームを着用してマウンドへ。満員の観衆が見守る中、ワンバウンドながらストライクゾーンに投げ込み、捕手の伊藤から「ナイスピッチ!」と声をかけられると恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
「緊張しました。(横浜スタジアムは)広かったです。ノーバウンドで届かなかったから」
自己採点は30点と辛口だったが、忘れられない一日となった。母の瞳さん(38)によれば、奏太くんは友人とのコミュニケーションが苦手で、学校でも友人と話す機会はほとんどなかったという。
息子が野球好きだったことから、何か変わるきっかけになればと、3年秋に野球チームに入団させた。瞳さんは「チームに入ってから少しずつ友達と話すようになり、それまでは行ったこともなかったけれど、放課後に友達と遊びに行くようになりました。笑顔も見られるようになりました。きょうはハラハラしましたけど、(奏太くんが)あのマウンドに立つことができてよかったです」と実感を込めた。
奏太くんの好きな選手は牧。「ホームランを打つところ」が一番の魅力だ。前日3日には、侍ジャパンのドキュメンタリー映画を見に行った。映像の中で見た、骨折しながらもWBCを戦い続けた源田(西武)が始球式の打席に立っていた。バックで牧が守るなか、源田から空振りを奪った。
将来の夢は「プロ野球選手。牧選手みたいになりたい」と笑顔をみせた。「自分の部屋に飾ります」と、この日の記念ボールと青いグラブを大事そうに抱えた。大役を終えた野球少年は、横浜スタジアムのスタンドから、憧れの選手へ熱い視線を送っていた。