抜群の話術で人気だった上岡龍太郎さん。中学の後輩、上田記者のこともかわいがってくれた 「阪神、解散!」
上岡龍太郎さんが宣言した。
阪神が暗黒時代と呼ばれた1990年代。来る日も来る日も負けてばかり。窮地(?)に陥っていたサンスポ編集局は虎党の著名人に再建論を聞こうとなった。
駆り出されたのが、今や〝虎のソムリエ〟として活躍する上田雅昭。京都・近衛中の後輩が顔を出すと、上岡さんは「お前のためにとっておきのネタを用意したんや」と相好を崩した。で、冒頭の発言となったわけだ。
こんな企画は、パンチが効かないとおもしろくない。阪神をぶっ壊すという大計画を聞いた上田は「ありがとうございます!」と頭を下げて、どうだ!といわんばかりに編集局に持ち帰った。ところが…。
「ウ~ン」。当時のデスクがうなっていた。確かに斬新。だけど、あまりにも刺激が強すぎる。はっきりいってシャレの世界だけど、冗談が効かない可能性だってある。
「上田、申し訳ないけど…」
結果、お蔵入り。上田が上岡さんに事情を説明しに行くことになった。はっきり言って、これはメチャクチャ辛い仕事。掲載日を楽しみにしている上岡さんにかくかくしかじかと説明した上で「ギャラはお支払いいたします」と頭を下げた。
「新聞には載らんのか?」
申し訳ありません。
「じゃあ、ギャラはいらん!」
そういってケラケラと笑ってくれた。上田は懐の深さに感動し「すごく救われた」と回想する。