20歳10カ月で史上最年少名人&七冠を達成した藤井聡太新名人 ■6月3日 2020年7月16日、渡辺明三冠(当時)が棋聖位を藤井聡太七段(同)に明け渡した際に発した「すごい人が出てきた」は本音だろう。「1局目、2局目の向こうの勝ちは、プロが感心する勝ち方。その場で考えて指す完全な技術、技量。僕は(唯一の白星だった)3局目に研究でガチガチに固めて勝ったが、それは僕じゃなくてもできる」。棋聖戦から1カ月半後、小紙の取材にそう答えたことからもうかがえる。トップ棋士の言葉だけに説得力があった。
あれから3年、棋聖失冠後につかんだ名人位も若き天才に手渡すことになった。「この3年くらいのタイトル戦の戦いを見ていると、こういう結果になるのは当然というか、力が足りなかった」。棋王と王将も新名人に屈服したのだからそう考えるのも当然か。
20歳10カ月で史上最年少名人&七冠を達成した藤井聡太新名人に、小欄は「最大の敵は睡眠負債」「三冠達成とタイトル戦挑戦による過密日程で変化する生活リズムにどう対処するか」と重箱の隅をつついてきた。彼はそれをことごとく克服。「モノが違う」としか言いようがない。
藤井七冠は、タイトル戦に15回登場して15期獲得。そればかりか、同じ2人が複数回の対局を行い優勝を争う番勝負では連敗を喫したことすらないのだ。そんな棋士がかつていたかは寡聞にして知らないが、藤井七冠が「すごい人」であるのは間違いない。
3年前、渡辺九段はこうも話していた。「羽生時代のあとは藤井時代」。タイトル獲得数で上回る自身を飛び越し、藤井時代が到来する-と。前名人が予言した藤井時代は早くも黄金期に突入した。ここまで来たらぜひ、史上初の八冠を達成してほしい。(鈴木学)