■6月2日 有名なドイツ人で名前は同じでも、人心に及ぼす影響はこれほど違うものか。偉大な作曲家、バッハは、癒やしのメロディーで現代にも安らぎをもたらしてくれる。ところが、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長(69)は、人心を逆なでする頑固なじいさんとしか思えない。
そのバッハ会長。先月末にスイスで夏季五輪国際競技連盟連合の総会に出席した際、ウクライナ侵攻に伴うロシアとベラルーシ両国選手の国際大会復帰への問題を受け「団結して一緒に立ち上がろう」と呼びかけた。平和の祭典・五輪のトップとして本来、呼びかけて救うべきはウクライナ人の命で、ロシアやベラルーシの選手の権利ではないはず。思いやりがなさすぎる。
そんな会長の下で、IOCは各国際競技連盟に対し、大会除外の続く両国選手について個人資格の「中立」選手に限定するなどの諸条件を挙げ、復帰容認を促す勧告を出している。今回の発言はさらに侵攻黙認と五輪大事のゴリ押しを加えた印象だ。
ウクライナはすでにロシアとベラルーシの選手が出場するなら、来年7月開幕のパリ五輪をボイコットすると表明。支持する国は欧州を中心に増えてきている。パリ市長も以前と違い、ウクライナ侵攻が続く限り、ロシアの五輪参加に反対を表明した。自然な流れだ。
一方、国際刑事裁判所から戦争犯罪容疑で逮捕状の出たロシアのプーチン大統領(70)は先月末、会談直後のベラルーシ大統領が救急搬送され、またも手を下したのかと噂になった。そんな極悪人と親密なバッハ会長。せめてJOC(日本オリンピック委員会)は追随しないよう願いたい。ウクライナをこれ以上、悲しませるな。(森岡真一郎)