勝利後の感想戦に臨む藤井新名人(左)。4勝1敗で渡辺前名人(手前背中)を突き放し、「藤井荘」という名の旅館で伝説を作った=1日午後、長野県高山村(撮影・川口良介) 将棋の最高峰タイトルである名人位を史上最年少で獲得した藤井聡太七冠(20)。小学生の頃に棋力を磨いた名古屋・東海研修会の元幹事で日本将棋連盟公認の棋道師範、竹内努さん(66)はサンケイスポーツに手記を寄せて祝福し、〝新名人〟のやんちゃぶりなどを明かした。これまで名人最年少記録(21歳2カ月)を保持していた谷川浩司十七世名人(61)も寄稿した。
サンケイスポーツに手記を寄せた日本将棋連盟公認の棋道師範、竹内努さん藤井さんがプロ棋士を養成する奨励会の下部組織、東海研修会に入ったのは小学2年進級を目前にした1年生の2010年3月。4年生の12年8月まで在籍しました。小1としては強かったけど、年上で中学~大学生の強者と対局しました。
現在は勝率・833と圧倒的ですが、研修会の2年5カ月では139勝90敗で同・606。5連敗もあったし、当時の藤井さんは、負けるととにかく大声で泣く。地元の愛知県瀬戸市では無敵だったと思うので、相当悔しかったと思います。
負けて泣く生徒はほかもいましたが、ほかに特技がある器用な人は辞めて別の道に進む場合もあります。藤井さんはどちらかというと不器用。対局を続けながら負けて、テクニックを学ぶ環境がなければ、今の藤井さんはなかったと思います。
雰囲気は今と違ってやんちゃ。私の対局中にはカンガルーみたいに私の懐に入ってきていたずらをするんですよ。小学生だから仕方ないですが、駒の並べ方もそんなにキッチリしていなかった。詰め将棋の問題を作るのが得意で、年上の会員に出題して、解けないときの顔をみて笑ったりしていました。昼食はよくカレーライスを食べていた印象があり、年上に囲まれながら、徐々に落ち着きを学んだと思います。
強さの秘密は基礎である詰め将棋で徹底的に鍛錬したこと。その成果で、小4で棋力がグッと上がりました。一方、研修会では指導に来ていた現在の師匠、杉本昌隆八段と出会いましたし、個人の才能だけでは偉業達成はなかったと思います。
将棋界では「光速の寄せ」と呼ばれる谷川十七世名人の終盤力、中終盤で逆転する羽生九段の「羽生マジック」などが研究されてきました。今後は藤井さんを研究する若手も台頭するはず。厳しい状況になっても精進して、全冠制覇の8冠を期待しています。