プロ野球はセ・パ交流戦がスタート。かつては〝パ高セ低〟が続いていたが、2020年のコロナ禍による中止を挟んで様相が変わってきた。
21年はセの球団が2~5位に食い込み、日本シリーズはヤクルトがセの球団として9年ぶりに制した。昨年は1位・ヤクルト、2位・阪神、6位・DeNA。この3チームはレギュラーシーズンでもAクラスに入り、10~12位に沈んだ巨人、中日、広島は巻き返すことができなかった。もう、〝みんなで負ければ怖くない〟ではなくなった。
セの球団が力をつけたというより、主力の移籍や世代交代などによってパの球団の方がセに近づいたのだと思う。
今年、個人的に注目しているのは、開催年3年連続で最下位の広島。24勝22敗のリーグ3位で交流戦を迎え、最低でも勝率5割で乗り切りたいところだが、初戦はオリックス・山本を打ち崩せずに零封負けした。日程の巡り合わせで今後も日本ハム・加藤貴、上沢、ロッテ・佐々木朗、西武・高橋ら軸になる投手と対戦する可能性が高い。
5月26日に解説の仕事でマツダスタジアムを訪れた際、新井監督に質問すると、「(エース級との対戦は)ウエルカムです。思い切りぶつかりますよ」と頼もしい答えが返ってきた。そして、近くにいたベテランの松山に視線を送り、「松山がバンバン打ってくれますから」と高笑いした。松山は苦笑いだったが…。
夜も眠れない受験生のようにデータばかり気にする指揮官より、ポジティブな方が選手は力を出しやすい。大いに楽しみにしている。
交流戦は観客動員に苦しんでいたパの球団が、巨人戦や阪神戦の〝ドル箱カード〟を望んで始まった。その意味では地域密着が根付いた今、〝役目〟は終わったと思う。
だが、満員の球場を見ると、ファンは楽しみにしていると感じる。選手にしても、開幕から2カ月近くがすぎて、リーグ内対戦がマンネリ化してくる時期。交流戦はいい刺激になって、新鮮な気持ちで戦える。セの選手にとって、福岡や札幌への遠征は特に楽しみだろう。梅雨の蒸し暑さを吹き飛ばすような、おもしろい試合を期待したい。(サンケイスポーツ専属評論家)