千日手の成立による指し直し局に臨む藤井叡王。休憩を挟み、12時間の激闘となった=岩手県宮古市(日本将棋連盟提供) 将棋・第8期叡王戦五番勝負第4局(28日、岩手県宮古市・浄土ヶ浜パークホテル、主催・不二家、日本将棋連盟)藤井聡太叡王(20)=棋聖・竜王など6冠=が挑戦者で先手の菅井竜也八段(31)に、同一局面を4度繰り返す千日手(せんにちて)で2度の指し直しの末、90手で勝利。対戦成績3勝1敗で防衛し、3連覇を果たした。対局場は宮古市の風光明媚な三陸海岸を一望できるロケーション。岩手県のスター、米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平投手(28)の出身地である奥州市の将棋関係者も偉業を喜んだ。
白い巨大な岩がそびえる地形と澄んだ海が美しい景勝地、浄土ヶ浜で2度の〝仕切り直し〟による長期戦を制した。
通常の対局なら中~終盤にあたる午後7時15分に始まった異例の〝第3局〟。藤井叡王は、この日3度目となる初手前のお茶を口に含むと、堅守の相穴熊を陣形に選び、持ち味の終盤力で3連覇を決めた。
午前9時から始まった〝第1局〟は44手で同一局面が4度繰り返し、午前中に1度目の千日手が成立。先手と後手が入れ替わり、藤井叡王の先手番で〝第2局〟が指された。両者互角の攻防で午後6時半頃、116手で再度千日手となった。
終局は同9時8分。藤井叡王は「最後は詰め筋が見えた」としつつ、終局後に対局を振り返る感想戦では「あ~っ」とつぶやき反省の表情。昨年6月の第93期棋聖戦五番勝負第1局でも1日2度の千日手を経験したが、「全体的に大変な戦いだった」と振り返った。
今回の対局は地元も大注目で、旬のウニやマスなど新鮮な海産物が並ぶ宮古市魚菜市場の女性店員は藤井叡王について「若いのに落ち着きがあって強い」と勝負師のオーラに感激。大谷の地元で同連盟奥州市支部の担当者(81)も「特別な棋士でどこまでも強くなってほしい」と期待。郷土の英雄である大谷は「棋士に例えると藤井さん」と通算勝率8割超の現役最強棋士に重ねた。