痛打を覚悟した投手が背後を振り返った先で、際どい打球を難なくキャッチしてくれる。そんな阪神・近本光司が、外野守備のリーダーとしての資質をさらに発揮するシーズンになりそうだ。ルーキーイヤーから指導してきた筒井外野守備走塁コーチが太鼓判を押す。
「ずっと言っている、自分がリーダーとして、どこまで(右翼、左翼の)2人を〝運転〟したり、ポジショニングを含めて、自分が動きやすいところに置けるかが大事やから。そういった意味じゃ、成長していくと思いますね」
入れ替わりの激しい助っ人野手との呼吸を、緻密なコミュニケーションで合わせる必要がある外野守備。今季は、右翼にドレッドヘアを揺らしたハッスルプレーが持ち味のミエセス、左翼に素早く安定した送球と球際の強さでチームを救ってきてノイジーとの〝トリオ〟を組む試合も増えてきた。その過程が、近本の守備力のさらなるレベルアップにつながる。
「そりゃ、絶対に上がりますよね。(阪神に)入った当時から言ってきたことがだいぶわかってきたと思いますけどね」
1球ごとに、何足分かの立ち位置の確認をする。外野の間を抜きそうなライナー性の飛球にはどう対処するか。背番号5が司令塔となって行う事前の準備が、2人の助っ人野手の好プレーを引き出すことにつながる。右翼を守るD1位・森下(中大)や、守備固めに起用される島田、途中出場から外野を守る植田らとの連係面の強化も、ここぞの場面で虎を救ってくれる。
27日時点で全45試合出場中の近本の失策は「0」。2021、22年に2年連続外野手部門のゴールデングラブ賞を獲得している名手の主戦場は中堅。そこから右に、左に快足を飛ばして守り勝つ野球を標榜(ひょうぼう)する岡田阪神を支えている。
筒井コーチは「まだまだ伸びしろあるからね、彼は。安定感も出てきてるし。範囲は変わらないまま。このまま、頑張ってほしいですね」と期待を込める。近本の〝支配〟する虎の外野守備が、新たな領域に到達しようとしている。(新里公章)