「親の顔が見てみたい」という表現がある。恥ずかしいような言動をとった人に対し、その親は一体どんな教育をしてきたのかという意味の厳しい批判だ。ごく最近、まさにそう言いたくなる不祥事が永田町で表面化した。
その「親」とは、岸田文雄首相のこと。長男の翔太郎氏が公邸内で親族と忘年会を開き、記念写真を撮るなどしていたと報じられた。〝子供〟とはいえ首相秘書官を務める公人であり、32歳の大人の話だ。
今回は首相が執務をする官邸ではなく、首相の住まいにあたる公邸だった。組閣後に赤じゅうたんの階段に閣僚が並ぶさまを模した記念写真で、「岸田翔太郎内閣」を気取ったのだろうか。親族が集まったせっかくの機会だから、物見遊山の気分になったのかもしれない。そんなプライベートな写真がどうして流出したのか。
ベテラン秘書と交代で秘書官に翔太郎氏が就任した際、「世襲」と批判を浴びた。今回の忘年会と時系列は前後するが、年明けの首相外遊で翔太郎氏が公用車で土産を買っていたことも批判的に取り上げられている。ただでさえ一挙手一投足が毎日注目されるのが首相。100言われたことの99はきっちり果たしていても、1つできなかったために辞任に追い込まれることもある。その首相を支える立場の人々は、余計な批判が持ち込まれないように律するのが当然だろう。
首相である親の背中を見て学び、親を超えて世襲批判もはねのけようという姿勢があるならいいのだが、意識の薄さが問題だ。首相はもちろんのこと、首相秘書官も国会議員もはしゃいでできるような職業ではない。G7広島サミットで上昇した内閣支持率が、この問題で下方に転じるとの指摘も出ている。それほどの大役を担っているという責任感を持って、国家の仕組みや外交などを学び、将来の日本に役立ててほしいと願うばかりだ。(政治評論家)