【アナハイム(米カリフォルニア州)25日(日本時間26日)=丹羽政善通信員】米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平投手(28)が投げる魔球「スイーパー」の変化の秘密を、東京工業大の青木尊之教授らの研究チームが解明した。スーパーコンピューター「富岳」「不老」を使用して空力解析し、回転軸が打者方向に傾くことで揚力が発生するメカニズムを初めて明らかにした。打者には浮き上がるように見える特殊な軌道が、科学的にも裏付けられた。
3月のWBC決勝。大谷は米国代表のトラウトからスイーパーで空振り三振を奪い、世界一を決めた今季、大谷の全投球の43%を占めるスイーパー。スライダーの一種だが、横変化の大きな種別として今季から球種の表示が細分化された。米データサイト、ベースボールサバントによると大谷のスライダーの平均落差118センチ、横幅18センチに対して、スイーパーは落差94センチ、横幅44センチ。対戦した多くの打者が「浮きながら大きく曲がる」と声をそろえる〝魔球〟のメカニズムが解明された。
東京工業大の青木教授らの研究チームは、大リーグの公式球を3Dスキャンしてボールの形状を把握。理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」と名古屋大情報基盤センターの「不老」を使い、空力解析を行った。スライダーは曲がりながら沈むのが一般的だが、打者に「浮き上がる」と錯覚させる軌道を生むキーワードは「回転軸×回転効率=揚力」だった。