レッドソックス戦で、12号ソロを放つエンゼルス・大谷翔平=アナハイム(共同) エンゼルス・大谷が今季、打撃妨害で5度も出塁している。私は広島、ヤクルトでの現役時代、通算4600打席で一度もなかった。敵味方を問わず、シーズンを通して全くお目にかかれない年だってある。開幕から2カ月足らずで5度というのは、異常な多さだ。
以前から指摘しているように、大谷の打撃は球を捉えるポイントが近い(捕手寄り)。球をぎりぎりまで引きつけて打つからだが、これだと最短距離でバットを振ると力がボールに加わらない。距離を作るためにバットを早く倒して、後ろ(軌道)を大きくするので、捕手が捕球しようと前に出したミットに当たることが増えたのだろう。
私は大阪・PL学園高3年の夏、背番号「2」をつけた。入学時は捕手だったからで、公式戦でマスクをかぶったこともある。捕手からの目線では、左打者は頭の右上からバットが降りてくる感じなのだが、打者・大谷は右肩のあたりでバットが見える感覚だと思う。普通はバットで上からたたかれる感じ、大谷の場合は横から払われる感じといえるかもしれない。
並の打者だと腕が詰まって強く振り切れない。ゴルフでいうパンチショット。打球スピードは出ても、角度がつかずに飛距離が出ない。大谷だからこそ、この打ち方でも成績を残せているのだ。
打撃妨害は打数に含まれずに出塁が与えられ、四球と同じようなもの。打者にとって悪いものではない。とはいえ、バットでミットをたたくことによって手首に変な衝撃が加わる可能性がある。故障の原因になりかねないので心配だが、今後、打撃妨害は減ると思う。
なぜか。20日(日本時間21日)のツインズ戦、大谷は152キロを前(投手寄り)で捉え、右中間席へ11号を放った。真っすぐを本塁打にしたのは6号以来2本目。この打ち方ならば、打撃妨害はまず起きない。
24日(同25日)の12号は真っすぐではないものの、高めのカットボールを左中間へ運んだ。ポイントが前だからこそ、高めを捉えて逆方向にも大きな打球を飛ばすことができる。28歳になっても成長途上の体を含め、大谷にはまだまだ〝伸びしろ〟があるとみている。(サンケイスポーツ専属評論家)