野球とは点を取るスポーツであり、点を取らせないようにするスポーツでもある。「攻め」と「守り」の時間が存在し、白熱した対決にファンは熱狂する。中でもスポットライトが当たるのは、攻めであれば本塁打や安打などの打撃、守りであれば投球内容だ。それは、スポーツ紙の記者として働いていても感じるし、そこが野球の妙味であることは野球経験者としてよく理解できる。
ただ、「守備」もまた、1プレーで勝敗を分けるほど野球においては重要だ。毎年、各ポジションの「名手」たちに贈られるのがゴールデングラブ賞。昨年、ヤクルトの球団史上最年少で栄誉ある賞を受賞したのが長岡秀樹内野手(21)だった。
139試合に出場し、遊撃手として両リーグ最多の守備機会659回で守備率・980をマーク。「守備」でリーグ連覇に大きく貢献した。
昨年、長岡のプレーを見ていたときは、やや粗さのようなものを感じていた。打球が飛んでも、どこか不安な気持ちを抱えながら一連の動作を見ていたのを覚えている。
だが、今年は違う。安定感、球際の強さ、スローイングの正確性など、全てにおいて向上したように感じる。何より、見ていて安心感が違う。森岡内野守備走塁コーチも「構えたときにグラブをずっと下に置いて動けるのもいいし、打球との距離感、入り方が感覚的に良くなってきていると思う。あとは球際に強くなった。春季キャンプでも一番粘れていたし、対応力や捕球力は段違いにすごかった」と証言する。 当の本人である長岡は、守備の意識についてこう語る。