「パリ五輪企画インタビュー」フェンシング・東晟良。手前はパリ五輪のマスコット「フリージュ」=東京都板橋区(撮影・福島範和) 今年3月に韓国で開催されたフェンシング・フルーレのグランプリ大会女子で銀メダルを獲得した東晟良(せら、23)=PEAKS=が、サンケイスポーツのインタビューに応じた。5月5日開幕のW杯(ブルガリア)から、パリ五輪の出場権を懸けた約1年間にわたるレースがスタート。日本勢最上位の世界ランキング5位につけるメダル候補が、五輪への思いを明かした。(取材構成・角かずみ)
表彰台に立った東の気持ちは複雑だった。3月に韓国・釜山で開催された五輪、世界選手権に次いでW杯と並ぶ格付けのグランプリ大会で2位。決勝で2021年東京五輪の金メダリスト、リー・キーファー(米国)に3-15で敗れた。
「トップ4に入ってメダルが確定したときはうれしかった。でも決勝の内容は満足していない。自分の力を100%出させてもらえなかった」
スピード感、ポイント力、剣をしなやかに突く技術。チャンピオンとの対戦で、実力差を痛感した。18年11月のW杯以来、団体を除くと自身4年半ぶりのメダル獲得。喜びと同時に、まだ世界のトップとは開きがあることを思い知った。
「メダル、目指しています!!」。1年延期された東京五輪を控え、東は取材の度に「メダル」と口にした。1歳上の姉、莉央(りお、明治安田生命)と姉妹での五輪代表。周囲の期待に応えたい一心だったが、本心は違った。
「みんながメダルを求める。言わなきゃいけないとか、言った方が応援してもらえるかなって。でも実際、本音で言うとメダルを取れる位置にはいなかった。本心では、せめて1回戦は上がって、一つ一つ勝っていって、いい結果になればと思っていた」
東京五輪は個人、団体ともに初戦で敗退。日本女子初のメダルには遠く及ばなかった。
悔しさをバネに、五輪後は長期休暇を取ることなく練習を再開。武器のアタックとフットワークに加え、持久力と全体的な筋力アップに着手した。コロナ禍で中止や延期が続いていた海外での試合も再開後は順調に重ね、これまで勝てなかった上位選手にも勝てるようになった。現在の世界ランキングは自己最高の5位。着実に階段を上がっている。
次戦は5月5日から始まるW杯(ブルガリア)。約1年にわたって開催される五輪レースでの成績で、来夏の代表選手が決まる見通しだ。