山梨学院ナインはマウンド付近で喜びを爆発させた。昨年から取り入れたスクールカラー「C2Cブルー」のユニホームが映えた(撮影・林俊志) 第95回選抜高校野球大会第12日第1試合(決勝、山梨学院7-3報徳学園、1日、甲子園)決勝が行われ、山梨学院が報徳学園(兵庫)を7―3で破って初優勝を果たした。山梨県勢として春夏通じて初の決勝進出で、頂点に立った。6試合連続先発のエース林謙吾投手(3年)が6安打3失点で完投勝利。6試合で計696球を投げ抜き、6勝を挙げるのは選抜大会史上初の快挙だった。5年に1度の記念大会として通常より4校多い36校が参加。観客数の上限をなくした甲子園で最終日は3万人が声援を送った。
山梨学院のエース、林は合計696球を投げて、チームを頂点に導いた(撮影・甘利慈)表情を変えなかったエースが感情を爆発させた。九回2死、山梨学院・林が今大会696球目を投じる。中堅手が飛球をグラブに収めると捕手の佐仲と抱き合い、歓喜の輪が広がった。
「楽しんで投げようと思ったのがよかった。開幕戦はドキドキしたけど、決勝は楽しめた。今は興奮していて、疲労は感じていない」
18日の開幕戦で1球目を投げた最速140キロ右腕は、6度目の先発でも疲れを感じさせなかった。直球にカットボール、カーブを交え、コーナーを攻めた。四回に2点を失ったが「苦しい場面が続くと想定していた」。球数制限(1週間で500球)で160球まで投球可能な中、118球、6安打3失点で完投した。
エースの自覚が芽生えたのは3月中旬に行われた松本大との練習試合だった。打ち込まれ、動揺を見せる姿を監督の息子の吉田健人部長から指摘された。「調子が悪くて自分よがりになって、態度に出ていた。部長から『何のために投げているんだ。チームのために投げるのがエースだ』ときつく叱られた」。求めるのはチームの勝利。「調子がよくても悪くても、勝てるように投げる」と自身に言い聞かせてきた。
この日は五回以降に直球の切れが増した。捕手の佐仲は「修正能力が(これまでと)違った」と証言。冬場のトレーニングで体重が約7キロ増え、6試合で696球を投げ抜いた(最多は2013年、済美・安楽智大の772球)。1大会での6勝は選抜史上初だった(夏は6勝が最高)。
打線は2点を追う五回、5連打を含む6安打で7点を奪った。エースを信じ抜いた吉田監督は「私が足を引っ張らないよう、一番の応援団でいようと思った」と笑顔を見せた。
「まだ140キロが常時出るわけではないし、上には上がいる。夏に(甲子園に)出られなければ意味がない」と林。背番号1は夏への進化を誓った。(赤堀宏幸)