3月31日のDeNAとの開幕戦でプロ初セーブを挙げた阪神・湯浅京己=京セラドーム大阪(撮影・安部光翁) シャンパンが目に入って感じる痛みでさえ、心地良い。世界一に輝き、勝利の美酒を味わった阪神・湯浅京己投手(23)はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表として過ごした1カ月を屈託のない笑顔で振り返った。
「最高です。アツアツです! なかなか経験できないことをたくさん経験させてもらって、自分にとって最高の大会だったなと思います」
2月17日。宮崎での強化合宿から刺激的な日々が始まった。他チームの選手との交流はもちろん、プラス働いたのは大リーグ組としてただ一人参加していたダルビッシュ(パドレス)と一緒に練習できたことだった。
スライダーやフォークの握りや投げ方など技術的なことを教われば、グラウンド外での悩みを相談したことも。睡眠の質が悪いことを話すと、催眠作用があるメラトニンという成分が含まれたグミを渡されたこともあった。頼れる兄貴分は、野球の奥深さを教えてくれた。「学ぶことばかり。こういうチャンスをいただけてすごくありがたい」。発見ばかりの毎日が湯浅の向上心をさらにかき立てた。
合宿を打ち上げ、名古屋、大阪での強化試合を経てWBCが開幕すると、リリーフとしてリードした展開で起用され、計3試合に登板。米マイアミで行われた準決勝のメキシコ戦では八回に走者を置いた状態でマウンドに上がり、適時打を許したが、最少失点で切り抜けたことでサヨナラ勝利につながった。
緊迫した展開での投球、そしてアウェーゲームの独特な雰囲気も経験できた。さらに日の丸を背負って戦い、世界一になったことは、何物にも代えがたい財産になるはずだ。
「普段では経験できないことをたくさん経験させてもらいましたし、このチームで世界一を取れてよかった」
金メダルという最高の土産を首からぶら下げて帰国した若き侍は、阪神で新守護神としてシーズンイン。〝世界〟を知り、さらにたくましくなった湯浅の挑戦はこれからも続いていく。(織原祥平)