開幕戦が行われたエスコンフィールド北海道。日本ハム対楽天で幕を開けた ■3月31日 「カーン!」という快音とともに、その打球はグン、グンと伸びてきた。記者が学生時代、初めて生観戦したプロ野球の公式戦で見た本塁打。左翼スタンドの目の前で弾んだ瞬間、「ウォーッ!」という地鳴りのような大歓声が球場全体を包んだ。カクテル光線に照らされ、夜空を切り裂く白球のなんと大きく見えたことか。
あのときの感動は今も忘れない。時は1976年6月8日の後楽園球場。セ・リーグ巨人対阪神の九回裏2死満塁、0対2で敗色濃厚だった巨人は末次利光外野手がバッターボックスに立った。右腕・江本孟紀から代わった左腕・山本和行の直球を見事にとらえ、逆転満塁サヨナラ本塁打を放ったのだ。
当時は巨人ファンが比較的多かった時代。奇跡のサヨナラを見届けた悪友5人のうち、阪神ファンは1人だけだった。彼は意気消沈、他の4人は周囲と一緒に歓声を上げ続けた…。ちなみに、その年、長嶋茂雄監督率いる巨人は前年の最下位から一転、リーグ優勝を飾っている。
ひるがえって、日本代表が今月、世界一に輝いたWBC。決勝の米国戦も、逆転勝利だった。野球の醍醐味の一つは逆転劇で、お祭り騒ぎをできるのが楽しい。あの余韻が残る30日、待望のプロ野球が日本ハム対楽天で幕を開けた。今年はどんな筋書のないドラマが待ち受けるのか、早くもワクワクが止まらない。
コロナ禍で制限された声出し、応援歌、ラッパなどの球音は4年ぶりに解禁。物価高や不穏な事件・事故が後を絶たない中、野球場では腹の底からひいきチームに声援を送りたい。大げさかもしれないが、人は歓喜を味わうために生まれてくる。その瞬間を選手たちと分かち合いたい。(森岡真一郎)