3月28日、広田神社を参拝し、祈祷を受けた阪神ナイン=広田神社(撮影・宮沢宗士郎) タイガースは3月28日に西宮市内の広田神社で必勝祈願を行った。開幕近しを感じさせる〝行事〟ではある。
どの球団も行っている。おごそかなムードが漂うのだが、時々、〝事件〟が起きたり、珍事が起きたりする。
先輩から聞かされたのは、闘将・星野仙一監督の逸話。中日監督時代のある年、某テレビ局のカメラマンがお神酒をひっくり返すという〝事件〟が発生。感情をあらわにした青年監督だった仙さんは猛烈にそのスタッフを叱責した。
ただ、それだけで事態は収まることはなかった。そのシーズン、ドラゴンズが敗れると、何度となく、「〇〇テレビのせいで負けた」「○○テレビが神様を怒らせた」…。執拗に責め立てたそうだ。まあ、それぐらいに真剣に神頼みしていた証拠かもしれない。もし、自分がそのスタッフだったら…。生きた心地はしなかったと思う。
阪神が「アレ」を祈願した広田神社は地元でも有名。阪神も初代ミスタータイガース・藤村富美男さんが活躍した時代から参拝を続けている。神社の一角の建物内に、オールドファンが泣いて喜びそうな参拝風景の写真や、選手たちのサインなどが陳列されている。一度だけ見せてもらった。
ここには個性豊かな宮司さんがいて、毎年、報道陣の取材でしゃべるのを、年中行事として楽しみにしていた。
ある年。
「ことしの中村監督のうしろに、もう一人の中村監督が見えました。後光が差していました。吉兆です。優勝です」。トラ番記者は大喜び。翌日の新聞の見出しは「あな、ありがたや! 中村オーラ」。でも、その年の阪神は4位だった。
翌年。「宮司、予想が外れましたね!」と冷やかした。すると、「いや、神様の声は間違っていない。でもな、ワシは見逃さなかったんや。○○選手がお神酒を飲んでいなかった。外れたのは、アイツがお神酒を飲まなかったからや」。こんな楽しい〝言い訳〟をした宮司さんは後にも先にも聞いたことがない。トラ番にとっては「簡単に記事ができる」実に有難い存在だった。