■3月29日 「シュンペイタって誰だか知ってる?」と聞かれても首を振る人がほとんどだろう。WBCの余韻が冷めやらぬ中、プロ野球も間もなく開幕するが、印象的な名前は覚えておいて損はなさそうなのがオリックスの山下舜平大(しゅんぺいた)。ストレート最速158キロ。大谷翔平をほうふつさせる身長190センチ、20歳の大型投手だ。
21年ドラフト1位で指名されたが、まだ1軍での登板はなく2軍2年間で4勝11敗。福岡大大濠高時代も3年の夏の甲子園がコロナ禍で中止になっており、逸材とはいえ一般にはほとんど知られていないのも無理ない。その山下が31日の西武との開幕戦で開幕投手の可能性大というから驚く。
オープン戦の最終登板となった24日の阪神戦では6回を投げ、強力打線を3安打7奪三振2失点に抑えた。投手王国といわれるオリックス。本来なら山本由伸、宮城大弥らのWBC組が開幕候補だが帰国後の調整があり、若手投手の中でも進境著しい山下に白羽の矢が立ったようだ。
懐かしい名前も蘇る。1軍登板経験のない開幕投手は球団では阪急時代の54年、高卒新人だった左腕梶本隆夫以来実に69年ぶりという。「他の投手たちより速い」と開幕投手に指名されて勝利投手となり、シーズン20勝をマーク。阪急一筋の20年間で254勝した大先輩を目指す第一歩でもある。
舜平大は昔のオーストリア=ハンガリー帝国の経済学者ヨゼフ・シュンペーターに由来するとか。福岡大大濠・八木啓伸監督は「ペイター(愛称)が開幕候補とは驚きでもあり光栄だ。物おじしないタイプで意気に感じて投げるだろう。こちらの方が緊張する」。将来の侍候補の躍動に期待したい。(今村忠)