女優、国会議員、女房、母の〝4役〟を全うした扇さんの華やかな祭壇=東京・芝公園(撮影・鴨志田拓海)
ギャラリーページで見る9日に食道胃接合部がんで亡くなった元参院議長で元女優、扇千景(おおぎ・ちかげ、本名・林寛子=はやし・ひろこ)さん(享年89)の葬儀・告別式が27日、東京・芝公園の増上寺で執り行われた。岸田文雄首相(65)ら700人が参列。故人を初代国交相に起用した小泉純一郎元首相(81)は弔辞で「立法府、行政府双方で改革を進めていた扇先生こそ、信念と改革の気持ちを胸に、未来に向かって走り抜いた人だった」とたたえた。
扇さんの優しさ、りんとした強さ、華やかさを感じさせるピンクと白の胡蝶蘭やカーネーション、バラ、トルコキキョウなど約3000本の花で彩られ、天皇陛下からの香典にあたる祭粢料(さいしりょう)が配された祭壇。中央には2003年頃に撮影した遺影や大好きだったリンゴ、女性初の桐花大綬章や従二位が飾られた。
告別式を終え会場を後にする前から虎之介、鴈治郎、扇雀、鴈治郎の妻で日本舞踊家の二代目吾妻徳彌、扇雀の妻と長女宝塚歌劇団の娘役として、歌舞伎俳優、坂田藤十郎さん(2020年死去、享年88)の妻として、そして女性議員の先駆者として激動の人生を歩んだ扇さん。
1977年に当時の福田赳夫首相らに誘われ、参院選に自民党から出馬して初当選。2007年の引退まで国交相や女性初の参院議長などを歴任した扇さんの遺骨は、この日、自民党や国会議事堂などを車で回って増上寺へ。縁の場所ではそれぞれ議員らが手を合わせた。
取材に応じた次男で歌舞伎俳優の中村扇雀(62)は20歳のときに扇さんから「国会議員になれ」と言われたと明かし「国会議員は母の天職だった。歌舞伎役者の女房としても全うできて稀有な人生だったと思う。十分、納得して旅立ったと思う」としみじみ。