記念写真に納まる(左から)母・久美子さん、ヌートバー、父・チャーリーさん=マイアミ(共同) ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で見事に優勝を果たした日本代表「侍ジャパン」。中でも日系選手として代表初参戦のラーズ・ヌートバー外野手(25)=カージナルス=が一躍脚光を浴びた。パフォーマンス心理学の国内第一人者でハリウッド大学院大の佐藤綾子教授が著名人らの「伝える力」を徹底解剖する連載(不定期)の第9回では、一瞬のうちに日本人の心をわしづかみにした〝サムライ〟の極意を探る。
侍ジャパンの看板といえば、大谷翔平投手(28)。しかし、2人目の〝太陽〟に多くの日本人が魅了された。それには複数の理由がある。
①明るさと友情 パフォーマンス心理学の実験データで、「人間は明るい人にひかれる」という原則がある。生きるために、みんな明るいパワーを求めている。大谷投手が世界中から親しまれる理由でもあるが、〝大谷太陽〟の横で〝ヌートバー太陽〟が光って相乗効果をあげた。
2人は互いにヒットを打つと喜び、健闘をたたえ合う。これが日本人の美意識にピタリとはまった。会社組織などでトップツーが醜い争いを繰り広げるとろくなことにならないが、互いに認め合うと組織に好影響を与えるのと同じだ。
②チーム重視 10日の韓国戦ではヒーローインタビューに立ち、一にも二にも「チームの勝利」という言葉を使った。「チームが勝ったのが一番うれしい。みんな打った、ピッチャーも最高だ。ありがとう」。チームへの感謝が前面に出るのも大谷投手と同じ。子供のころからWBCにあこがれていた点も共通する。成功する人は、長年の努力で得た成功をチームに帰する思考パターンと言葉がある。
③比類ないユーモア 韓国戦でデッドボールが背中を直撃し、ヌートバー外野手は相手投手をにらんだ。ところが、試合後のヒーローインタビューで何と言ったか。
「ちょうど凝っていたところにぶつかって、凝りがほぐれた」
これだけのユーモアをとっさに出せるかどうか。言葉の国・米国で育った彼だからこそのユーモアの才能といえる。