WBC侍ジャパンの表敬を受け栗山英樹監督(左)からかけてもらった優勝メダルを首に、ナインの寄せ書きの贈呈を受ける岸田文雄首相=23日午後、首相官邸(春名中撮影) ■3月27日 ウクライナを電撃訪問した岸田文雄首相は、ゼレンスキー大統領に「必勝しゃもじ」を贈った。「祖国や自由を守るために戦っている。この努力に敬意を表したい」という理由だが、例によって野党は「(戦闘は)選挙やスポーツではない。『必勝』も不適切」と批判した。批判は簡単だが、では手土産で何を持っていくかは難しい。
しゃもじは首相の地元、安芸の宮島・厳島神社参拝土産として生まれた。「敵を召し(飯)取る」との意味でゲン担ぎに使われ日清・日露戦争では出征兵士が奉納した。日本人なら毎日といっていいほど手にしているもの。「負けるな」という思いがシンプルに伝わるのではないか。
この土産選びはどうやら当たりだったらしい。ウクライナのコルスンスキー駐日大使は25日、ツイッターで「必勝祈願」の字句について「その通りです!それが私たちに必要なことなのです!」と投稿。「これからは日本からの贈り物として『必勝しゃもじ』がとても喜ばれます」とも発信した。
ピンチの連続で青息吐息だった岸田首相だが、関係正常化で合意した日韓首脳会談後の産経新聞社、FNN合同世論調査で内閣支持率が前回2月から5・3ポイント増の45・9%まで盛り返した。5月のG7サミット(広島)を控えウクライナ訪問がさらなる追い風になりそうで、しゃもじの〝御利益〟はなかなかのものらしい。
もっともウクライナから早朝帰国した23日、これまたWBCから帰国直後の侍ジャパンの夜の官邸表敬訪問は後日で十分だった。ともに疲労困憊(こんぱい)。首相はご機嫌だったが、侍人気にあやかろうとする首相周辺の思惑が透けてみえたのが残念ではあった。(今村忠)