「感謝」と書いた色紙を披露するWBC日本代表・栗山英樹監督=27日午後、東京・内幸町(飯田英男撮影) 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表「侍ジャパン」を3大会ぶり3度目の世界一に導いた栗山英樹監督(61)が27日、東京・千代田区の日本記者クラブで記者会見に臨んだ。帰国後に村上宗隆内野手(23)=ヤクルト=と交わした約束や、米国との決勝でダルビッシュ有投手(36)=パドレス、大谷翔平投手(28)=エンゼルス=の継投が実現した経緯など、優勝の裏側にあった〝秘話〟を明かした。
激闘の疲れは帰国から5日たっても、なお深いしわとなって刻まれていた。3大会ぶりの世界一に導いた栗山監督は、一人一人の選手に話題が及ぶと、その時だけホッとしたように目を細めた。
「夢は正夢。人生でこれ以上、幸せな瞬間はない」。歓喜を笑顔で振り返り、続けて明かしたのは選手たちとの強い信頼関係を表す数々の秘話だった。メキシコとの準決勝で逆転サヨナラ打、米国との決勝で本塁打を放った村上とは、凱旋帰国後の別れ際に固い約束を結んだ。
「ムネに『宿題を持ったまま終わるよ』ということは伝えました。今回出たメジャーリーガーを超えていくために、宿題があったほうが前に進める。本人も『次は必ず4番を打ちます』と、はっきり言っていました」
1次リーグは全試合「4番」に起用したが14打数2安打と低迷した村上。準々決勝前に電話を鳴らして「5番」起用を伝え、大会中は監督室に呼んだり、LINEに思いを記したりしたこともあったという。
そして、期待するからこそ最後に厳しい言葉を投げ掛けた。「彼が頂点に立つことは、これっぽっちも疑っていない。もっと高みを目指すために努力を続けないといけない」と、連覇を狙う26年大会で村上が打線の中心を担うことを願った。
選手起用に関する舞台裏も明かした。米国との決勝で実現した八回・ダルビッシュ―九回・大谷の継投。その光景を長く思い描いていたといい「できるか、できないかじゃなくて、やるか、やらないか。実現に向けて真っすぐ走るだけだった」と説明した。
ただ「最終的に決まったのは、決勝の練習場に行ってから」。所属球団と連絡を取りながら「本人が投げられるかどうか確認した」と、当日昼までギリギリの調整があったという。「後ろに行けば行くほどプレッシャーがかかる。あの2人しか超えられないと思った。送り出した時点で僕の仕事は終わり。全く不安はなかった」と述懐した。
今大会で代表監督を退任し、今後は未定だ。「ここからは恩返しなので、やってくれと言われたらもちろん考える」とした上で「野球に限らず、とどまってはいけない。先のことは考えていない」と強調。〝世界一の監督〟は、日本球界の未来に思いをはせた。(横山尚杜)