シャンパンファイトに臨む野球日本代表・村上宗隆、ダルビッシュ有、ラーズ・ヌートバー(左から) 野球日本代表の「侍ジャパン」が第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で3大会ぶりの優勝を果たした。2月17日、宮崎市で始まった強化合宿から約1カ月。優勝までの軌跡をWBC取材班が全3回で連載する。第2回は、主将を置かなかったチームが一丸となって戦えた理由とは-。
2月17日。宮崎市での強化合宿初日に栗山監督はあえて主将を設けない方針を示した。「年齢も実績も関係ない。自分がチームを引っ張るんだというメッセージを送ったつもり」。そんな将の意思をくみ取りながら、平均年齢27・3歳と若いチームを引っ張ったのが36歳でチーム最年長のダルビッシュだった。
大リーグ組でただ一人、参加した宮崎合宿は「年齢は全く気にしていないで」と、後輩たちと分け隔てなく接し、培ってきた技術や知識を惜しみなく伝えた。休養日には食事会を開催。テーブルを囲んで親睦と結束を深めた。
時には結果が出ない選手に対し「人生の方が大事。野球ぐらいで落ち込む必要はない」と言葉を掛け、メンター的な役割も担った。孤高で近づき難いイメージは過去のもの。海を渡り、メジャーリーグでもまれ、けがも乗り越えた。守るべき家族も増えた。酸いも甘いも経験したからこそ、今大会を通じて伝えたいことがあった。
「野球というのは楽しく、明るくやるスポーツなんだって、ポジティブなイメージを皆さんに持ってほしい」
大黒柱としてグラウンド内外でチームにもたらした影響は大きい。指揮官は「ダルビッシュジャパンと言っていいくらい。日本の野球界にとって本当に大きなものになるのは間違いない」と目を細め、チームメートも「ダルビッシュさんが…」と口をそろえる。
本人は「チームワークは(これまでで)ナンバーワンだと思うし、みんなが明るく、支え合ってプレーできるところが一番」と総括。日の丸を背負い、八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せたのは紛れもなく背番号11だった。(WBC取材班)