■3月24日 世界一に輝いた侍ジャパンを巡り、列島の感動と興奮が止まらない。テレビ映像を何度見ても、見飽きることがない。今週末は多くの人が満開の桜の下や居酒屋などで、思い思いに話の花を咲かせることだろう。大会MVPには大谷翔平が選ばれたが、プレーだけでなく、言葉の力もMVP級だった。
中でも、スーパースターぞろいの米国と激突した決勝直前の円陣。「きょうだけは憧れを捨てましょう」と仲間を鼓舞した場面は印象的だった。とかく勝利だけに固執しがちなとき、米国に敬意を払った上での堂々たる発言。大谷は試合後、その真意について「尊敬は弱気に変わることが多々あるので」と説明した。
「きょうだけは憧れを捨てましょう」と聞いて、勇気づけられたのは侍たちだけではあるまい。入試や恋愛、仕事の壁を含め、さまざまな試練や悩みに直面した人の心にも響いたのではないか。今年最速で流行語大賞の候補になる予感さえするが、大谷の名言はこれだけではない。
決勝後、現地メディアからドラマや映画化されたスーパーマンの由来にかけてか「どこの惑星から来たの」と聞かれたときだ。大谷は少し考えた後「日本の田舎というか、チームも少ない所でやっていた。日本の人たちからしても、頑張ればできると見せられたのは本当に良かった」と故郷・岩手県を念頭に発言した。
当意即妙の返答は、人口減の進む各地の子供や大人たちも元気づけたのではないか。他では、ダルビッシュ有が、なかなか結果の出なかった村上宗隆らに「人生の方が大事。野球ぐらいで落ち込む必要はない」と激励したと伝えられる。いずれも将来、国語や道徳の教科書に載せてほしいくらいだ。(森岡真一郎)