「憧れは捨てましょう」―。
野球の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝。大リーグのスター選手がそろう米国との対戦前に、日本代表の大谷翔平(28)=エンゼルス=がチームメートにかけた言葉が米メディアでも取り上げられ、反響を呼んでいる。ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は「冷静ながら気迫のこもったスピーチ」と紹介し、仲間を鼓舞した姿を称賛した。
「憧れてしまっては超えられない。僕らは超えるために、トップになるために来たので、きょう1日だけは憧れを捨てて、勝つことだけを考えていきましょう」。試合前の円陣の様子を、日本代表「侍ジャパン」の公式ツイッターが動画で配信。その後、交流サイト(SNS)上で英訳が記され、あっという間に拡散された。
抑え投手として九回に登板した大谷が、エンゼルスの同僚であるマイク・トラウトを三振に仕留め、劇的に日本が優勝を決めた試合後。大谷も出演した中継テレビ局のインタビューでは、メジャー通算696本塁打を放った解説者のアレックス・ロドリゲスさんが「感動的なスピーチ」と話し、言葉の意図を質問。大谷は「リスペクトの気持ちが(強いと)受け身になってしまう。負けないんだという気持ちでいきたかった」と説明した。
2006年の第1回大会ではイチロー(マリナーズ)が1次リーグ前に発した「向こう30年、日本には手が出せないな、と。そんな感じで勝ちたい」との言葉が鮮烈な印象を残した。国の威信を懸け、数々の名勝負が繰り広げられてきたWBC。今大会の大谷の名言も、長く語り継がれていくかもしれない。(共同)