中日と壮行試合を行った4日、バンテリンドームナゴヤのベンチで大谷(右)と話す村上 野球日本代表の「侍ジャパン」が第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で3大会ぶりの優勝を果たした。2月17日、宮崎市で始まった強化合宿から約1カ月。優勝までの軌跡をWBC取材班が全3回で連載する。第1回は、一線級が集結したことで選手が抱えた苦悩と相乗効果を紹介する。
大谷ら4人のメジャー組に加え、日本国内でトップクラスの選手が集結した。村上はヤクルトで不動の4番打者。不調な時期があっても立場が揺らぐことはない。しかし、WBCのような短期決戦では復調を待ってはくれない。1次リーグは14打数2安打。各球団の主力がそろう中でプレーする難しさをこぼした。
村上宗隆(左)とダルビッシュ有「なかなか、チーム(ヤクルト)でこういうことを味わうことがない。逆に『打てよ』と言葉を掛けられた方が、楽になる部分もあった」
吉田や岡本和、山川らは村上の実力を十二分に知る。一流選手が集まるがゆえの気遣いに、村上は戸惑いを感じることもあった。
それでも、一流が集まるがゆえの相乗効果があった。下を向きかけていたとき、進塁打や犠飛を放った際に大谷から「ナイス、そういうのが大事だよ」と前向きな言葉を掛けられた。ダルビッシュには「人生の方が長い。野球ぐらいで落ち込む必要はない」と助言された。
WBC2023準決勝、メキシコ戦の9回、サヨナラ勝利に喜びを爆発させる村上宗隆(右から2人目)ら侍ジャパンナインメキシコとの準決勝。4―5の九回無死二塁で四球を選んだ吉田は、次打者の村上を指さした。「お前が決めてこい」。それまで4打席凡退していた村上に対し『打て』と指示した栗山監督を含め、チーム全員が信頼。山川、山田、牧、周東、湯浅、大勢は今大会のベストシーンの1つに村上の復活劇を挙げた。
「ムネが打ったのはうれしかった。(自分も)チーム(西武)で4番を打っているので気持ちがよく分かる。あの苦しさは打っている人じゃないと味わえない」と山川は言う。同じ境地を共感できる仲間がいたから、短期間で濃密な信頼関係が構築された。生み出された相乗効果は間違いなく米国との決勝につながった。(WBC取材班)