第5回WBCは日本の3大会ぶりの優勝で幕を閉じた。日本中に元気を届けてくれて、選手をはじめ関係者の皆さんに、心からありがとうと言いたい。今大会は日本だけでなく、米国でも盛り上がった。テレビ画面を通じて実感しながら、昨年7月のMLBオールスターゲームを思い出した。
私はNHKで中継された試合を、栗山監督と一緒に解説した。直前に、今大会で米国の主将を務めたトラウト(エンゼルス)が、WBCへの出場と自分が中心になってチームをつくると表明。2人で「すごいチームになりそうだね」と話をした。
ドリームチームが編成されれば、日本にとって強力なライバルになる。だが、栗山監督は大会の盛り上がりを予想して、「うれしいねえ」と喜んでいた。米国の本気は、他のチームに好影響をもたらす。米カリフォルニア州出身の左腕サンドバル(エンゼルス)がメキシコ代表で出場し、準決勝の日本戦に先発してくるとは夢にも思わなかった。メジャーの一流どころが、自分のルーツを探ってでも出場したいと思う大会になったのだ。
栗山監督は私と同じ61歳。日本代表監督は選手との参加交渉など、球団だとフロントがやる仕事もこなさなければならない。2月の宮崎強化合宿で取材しているときも、関係者が近寄ってきて判断を仰ぐことがあった。
試合以外のことにまで判断を下すのは、ものすごいプレッシャーがあると思う。代表に限らず、監督とは自分の命を削りながら臨む職業。相当な労力が、世界一という結果で報われて良かった。
今大会では、参加する選手次第で大会の価値が上がり、盛り上がることがわかった。日本の連覇がかかる第6回大会は、3年後の2026年。選手の体調が万全な状態で戦うには、レギュラーシーズンを中断して開催するのがベストだ。出場チームにはレベルの差があるので、開幕前に1次リーグまで終えて、準々決勝以降だけにすれば期間は短くて済む。
今大会の米国は投手に辞退者が相次ぎ、野手と比べると少し見劣った。準優勝に終わったことが本当に悔しいならば、開催時期を見直す可能性はゼロではないかもしれない。(サンケイスポーツ専属評論家)